研究課題/領域番号 |
18K05656
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研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
仲下 英雄 福井県立大学, 生物資源学部, 教授 (70280724)
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研究分担者 |
加藤 久晴 福井県立大学, 生物資源学部, 准教授 (40281042)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | プライミング / 病害抵抗性 / サリチル酸 / ジャスモン酸 / トマト |
研究実績の概要 |
トマトのプライミング関連候補遺伝子を過剰発現する形質転換植物の作出は完了しておらず、現在進行中である。そのため、これらの遺伝子について病害抵抗性の評価等に進めることができていない。 トマトに菌根菌が共生して誘導されるプライミングの特性について遺伝子発現解析による詳細な解析を行った。病原細菌Pseudomans syringae pv. tomato DC3000の接種後のサリチル酸(SA)シグナルの活性化が、通常の植物よりも早期に起きていることはPR1b遺伝子の発現から示されていたが、PR2aも同様であることが明らかとなった。また、ジャスモン酸(JA)の生合成及びシグナルについても解析した結果、JA部分応答性遺伝子PI2の誘導が早期化し、また、生合成に関わるLOXdについても早期化の傾向が示された。これらの結果から、共生菌によるプライミングは、病原細菌を認識した際のSAおよびJAの両植物ホルモンを介する防御応答シグナルの活性化を早期化して強めていることが明らかになった。更に、非病原性細菌であるPseudomonas syringae pv. oryzaeを用いた解析を行ったところ、病原性細菌と同濃度を接種した場合には、菌根菌の共生の有無の影響はなく接種後12時間で過敏感細胞死が生じ、プライミングの効果は認められなかった。しかし、低濃度の非病原性細菌を接種した場合には、病原細菌の場合と同様に、SAおよびJAシグナルの活性化が早期化されることが観察された。これらの解析結果から、菌根菌により誘導されるプライミングは、病原性細菌及び非病原性細菌のいずれを認識して起こる応答においても働いており、また、いずれの場合においてもSAおよびJAシグナルの両方の活性化が強化されることが明らかとなり、プライミングでは微生物細胞の構成成分に対する認識と応答の全般が何らかのメカニズムにより強化されていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トマトのプライミング関連候補遺伝子の過剰発現体の作出は遅れている。これは、2019年度前半に大学内で実験室の移動があったため、遺伝子組み換え実験を継続的に進めることができなかったためである。形質転換体の作出は現在進行中であるが、本課題の計画としては遅れていると判断される。 菌根菌の共生によるプライミングの特性を解析した結果、プライミングは、サリチル酸シグナルのみではなくジャスモン酸シグナルに対しても効果があること、また、非病原性細菌に対しても効果があることを明らかにしたが、これは、これまでに明らかになっていないことであり、本課題として予想以上の成果をあげたと言える。 以上を考慮して、本課題の目的達成に向けては、全体として概ね順調に進捗していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続いて、トマトで得られているプライミング関連候補遺伝子の過剰発現体の作出を進めて、これらの病害抵抗性を評価することによりプライミング機構に働く因子の同定を行う。 プライミングの特性解析では、現在までにエチレンシグナルの早期化は認められていないが、一方で、細菌エンドファイトによるプライミングにエチレンシグナルが必要であることをイネ、シロイヌナズナで明らかにしている。そこで、シロイヌナズナと細菌エンドファイトのプライミング誘導系を用いて、エチレンの生合成及びシグナルに関する遺伝子について、変異体におけるプライミング誘導活性、プロモーター制御下にGFPまたはGUSを用いたレポーター系いよる遺伝子発現誘導活性を解析し、プライミングに働く因子の同定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬やプラスチック製品等の消耗品の多くを大学から支給される研究費で購入したため、本予算に未使用額が生じた。次年度の研究推進を加速化して進めるために使用する予定である。
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