研究実績の概要 |
昨年度までに作製した、イネいもち病菌の病原力遺伝子RBF1(HA-tag付き)が導入され、その転写レベルでの高発現が確認された3種類のイネ(Pubi-A, -B, C)について葉いもち病抵抗性を評価した。接種源として野生型いもち病菌およびそのΔrbf1株を用いた。その結果、イネキチナーゼ遺伝子の分泌シグナルを付加したRBF1を導入したPubi-Cイネでは、Δrbf1株の病原性が完全に回復するレベルではなかったものの、いずれの菌株に対しても抵抗性が低下したことから、Rbf1タンパク質はイネの細胞外で機能することが示唆された。 次に、Pubi-A, -B, Cイネの完熟種子から誘導した液体培養カルスをキチンエリシター(7量体キトオリゴ糖)で1時間あるいは6時間処理しRNAを抽出後、定量PCR法で10種類のキチンエリシター誘導性遺伝子の発現量を比較解析した。その結果、発現誘導量は導入したRBF1の分泌シグナルの有無に関係なくコントロール(非形質転換体)と同等であったことから、Rbf1がイネの病害応答遺伝子の発現に直接作用する可能性は低いと考えられた。 以上の結果をこれまでの知見と合わせると、Rbf1はイネ細胞侵入時にいもち病菌から分泌され、イネの細胞外に当たるいもち病菌とイネ由来の侵入菌糸包囲膜の間(EIHMx)において何らかの仕組みでBIC構造体を形成することでイネの免疫反応を間接的に抑制し、いもち病菌の活物寄生を成立させると考えられた。
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