研究課題/領域番号 |
18K05665
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
高橋 章 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, グループ長補佐 (20414914)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | イネ / 抵抗性遺伝子 / ETI / 変異体 |
研究実績の概要 |
植物の抵抗性遺伝子(R遺伝子)の活性化により誘導されるETI(effector-triggered immunity)の発動制御因子の特定及びその分子機構の解明を目指し、イネいもち病菌に対するETIの誘導が不完全なイネ変異体3系統(ttm5、ttm11、ttm13)について、原因遺伝子の単離を進めている。 解析の対象とするイネの変異体3系統のうち、候補遺伝子が特定できていなかったttm11変異体について、PacBioを用いたNGS解析を実施し、全ゲノム情報を得た。これまでの遺伝解析に加え、日本晴(WT)及び他の変異2系統(ttm5,ttm13)のゲノム情報と比較解析したところ、ttm11変異体に特徴的な欠損変異を見出すことに成功した。興味深いことに、この欠損変異はttm13変異体の候補遺伝子と同一の遺伝子内に生じており、同一の遺伝子の独立した変異がそれぞれの変異体の表現型を引き起こしていることが示唆された。 ttm5及びttm11/13の候補遺伝子が、これらの変異体の原因遺伝子であることを確かめるため、ゲノム編集によるノックアウト(KO)系統を用いて解析を進めたが、表現型が安定しないことが問題となった。そこで、T2後代種子を用いた解析を進めることとした。また同時に、変異体背景への相補試験に向けた形質転換イネの作成も進めた。ttm5及びttm11/13における変異が、さらに異なるR遺伝子に対して影響を与えるか解析するため、日本晴とは異なる既知のいもち病R遺伝子を4個持つイネの品種「ハマアサヒ」を遺伝背景として、それぞれの候補遺伝子をノックアウトする形質転換体を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
解析の対象とするイネの変異体3系統のうちttm5およびttm13の2系統において、遺伝解析及びNGSによる多型解析等から候補遺伝子を特定し、CRISPR/Cas9システムを用いてKO系統を作成し解析を進めてきた。本年度は、これまでの遺伝解析で候補領域を特定できなかったttm11について全ゲノムシーケンスを実施し、日本晴ゲノム及び他の2系統(ttm5,ttm13)と比較解析を実施した。その結果、ttm11のゲノム上に、特異的な欠損変位を見出すことに成功した。ttm11で見出された候補遺伝子はttm13の候補遺伝子と同一の遺伝子であり、それぞれ独立した変異が生じていることが明らかとなった。これらの候補遺伝子が、それぞれの原因遺伝子であることを確認するため、KO系統での解析を進めているが、T1世代種子を用いた解析では抵抗性の評価が安定しなかった。そのため、T2世代以降の後代種子を用いるとともに、変異体を遺伝背景としてゲノム断片を導入した形質転換体を作成し相補試験を実施する準備を行った。
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今後の研究の推進方策 |
作成したKO系統T2世代を用いて抵抗性を評価するとともに、それぞれの変異系統に対して相補試験を実施し、原因遺伝子の特定を進める。また、「ハマアサヒ」を用いたKO系統についても複数の抵抗性遺伝子に対する影響を評価し、特異的なR遺伝子にのみ影響を与えるか、R遺伝子の普遍的な下流因子であるか解析する。原因遺伝子が特定できた場合、機能解明を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
T2世代の種子の準備に時間がかかったことから、KO系統の評価が間に合わなかった。これまでに収穫したT1,T2世代の種子を使用することにより、KO系統の評価は可能と考えられる。また、相補試験用のコンストラクションは終了したため、本年度形質転換体の作成を実施し、T0個体を用いて評価を実施する予定である。
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