研究課題/領域番号 |
18K05666
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研究機関 | 岡山県農林水産総合センター生物科学研究所 |
研究代表者 |
向原 隆文 岡山県農林水産総合センター生物科学研究所, その他部局等, 専門研究員 (80344406)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 青枯病 / 抵抗性 / エフェクター |
研究実績の概要 |
これまでの解析から青枯病抵抗性のナス近縁種ヒラナス(Solanum integrifolium)及びトルバム・ビガー(Solanum torvum)は青枯病菌が感染時に植物細胞内に注入するIII型エフェクター(RipAX2)を認識して病害抵抗反応を誘導することを明らかにしている。ヒラナスは近縁の青枯病感受性栽培ナス(Solanum melongena)と種間交雑が可能なため、両者のF1雑種植物を作出して青枯病抵抗性を調べたところ、全て青枯病抵抗性を示した。このことから、ヒラナスの青枯病抵抗性は優性遺伝子に支配されることが明らかとなった。ヒラナス及びトルバム・ビガーが持つ青枯病抵抗性はエフェクター認識に起因するため、抵抗性(R)タンパク質遺伝子の関与が強く示唆される。ヒラナスと栽培ナスの種間交雑実験で得られたで得られた結果はこの考えと矛盾しない。トルバム・ビガーの系では、ヒラナスや栽培ナスの系では適用が困難なウイルス誘導性遺伝子サイレンシング(VIGS)法が適用可能であることを明らかにした。VIGS実験を目的にトルバム・ビガー転写産物解析から本植物が持つ約77,000の転写産物を明らかにし、この中に含まれる約350の推定NBS-LRR抵抗性タンパク質遺伝子断片の情報を抽出した。現在、トルバム・ビガーが持つNBS-LRR抵抗性タンパク質遺伝子の発現を抑制するためのVIGSベクターの構築を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒラナスの系では、連携する外部研究者の協力を得て栽培ナスとの種間交雑を行い、F1雑種植物の青枯病抵抗性を調べることができた。RipAX2のようなエフェクターを認識して誘導される抵抗反応にはRタンパク質の関与が一般的であるが、ヒラナスの抵抗性は予想通り優性遺伝子支配であった。ヒラナスとトルバム・ビガーはRipAX2を認識するNBS-LRR抵抗性タンパク質遺伝子を持つと考えており、今後、トルバム・ビガーの系で実施する抵抗性遺伝子のVIGSスクリーニングに期待が持たれる。転写産物解析による推定抵抗性遺伝子の同定やVIGSベクターの構築も順調であるため、研究は予定通り進捗していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ヒラナスの系では、今後は交配による青枯病抵抗性遺伝子のマッピング作業を進める予定である。今年度得られたヒラナスと栽培ナスのF1雑種植物を栽培ナスと戻し交配し、交配集団(BC1F1)を取得する。BC1F1の青枯病抵抗性解析から抵抗性遺伝子が座乗する染色体領域を絞り込む。トルバム・ビガーの系ではVIGSベクターの構築を完遂するとともに、青枯れ病抵抗性遺伝子のスクリーニングを開始する。具体的には、VIGS処理によりRipAX2に対する抵抗反応が低下した植物個体を選抜し、RipAX2を認識する青枯病抵抗性遺伝子候補を見出す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じたが、少額であり、今年度の研究の進捗には影響は無かった。来年度の使用計画にも変更は無い。
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