研究課題/領域番号 |
18K05669
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
古川 誠一 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (10391583)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アワヨトウ / EPL / 遺伝子発現 / 転写調節領域 |
研究実績の概要 |
体内に侵入した外敵を効率的に排除する免疫反応は、外敵の非自己成分を認識することで活性化される。その認識について新規な機構である「サイズ認識」機構を明らかにするためにEPLという昆虫免疫反応の一つである包囲化反応を促進するタンパク質、そして遺伝子の機能を調べている。昨年度は、このEPL遺伝子がどのような転写制御を受けているかを明らかにするために、詳細な遺伝子発現様式を調べるとともに、転写制御領域である5'上流域のクローニングを試みた。 遺伝子発現様式の調査は、逆転写リアルタイムPCR法とin situハイブリダイゼーション法を用いて実施した。アワヨトウ幼虫にサイズの異なるポリスチレンビーズを注射後、継時的に血球細胞を回収し、EPL遺伝子の発現量を調べた結果、血球細胞が貪食反応を示す小さいサイズのビーズを注射したときは、遺伝子発現量に変動は見られなかったが、血球細胞が包囲化反応を示す大きいサイズのビーズを注射したとき、4時間目まで発現の上昇が見られることが確認された。またin situハイブリダイゼーション法を用いてEPL遺伝子を発現する血球細胞の特定を試みたところ、ビーズの周囲に付着した包囲化反応中の血球細胞から発現を示すシグナルが見られた。血球細胞種で見ると、顆粒細胞で発現が見られたもの、発現の見られない顆粒細胞も観察された。 EPL遺伝子の転写制御領域は、アワヨトウゲノムDNAを制限酵素処理し、アダプター配列を結合し、EPL遺伝子のコーディング領域に作成したプライマーとでPCRを行うことで増幅した。その結果、EPL遺伝子の約1 kbpの5'上流域の配列を決定することができた。上流配列を検索した結果、免疫系遺伝子の転写制御領域に多く保存されているNF-kB結合配列やC/EBP結合配列などが見つかり、これらの転写因子がEPL遺伝子の転写に関わることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
EPL遺伝子を発現する血球細胞種を同定するためにin situハイブリダイゼーション法の確立を試み、現在までに顆粒細胞を含む付着性血球種の結果は得られている。 EPL遺伝子のプロモーター活性試験を行うために必要な5'上流域の配列を得ることができた。 EPLタンパク質に対する抗体を作成するために大腸菌での大量発現を試みているが、作成に必要な量に到達できていない。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度のin situハイブリダイゼーション法による解析では、EPL遺伝子を発現する非付着性血球細胞での観察はできなかった。これらの細胞種で発現しているかを確認するためにさらなる実験方法の改良を行い、発現血球種の同定を試みる。またEPLタンパク質の作用部位を明らかにするために、抗体作成を試みる。 EPL遺伝子のプロモーター領域活性測定を行うために、アワヨトウの血球由来の培養細胞への遺伝子導入系を開発し、5'上流域の配列にルシフェラーゼ遺伝子をつないだレポータープラスミド導入によるプロモーターアッセイを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ポリクローナル抗体作成の外注を予定していたが、達成できなかったため。
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