研究課題/領域番号 |
18K05670
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
島田 裕子 筑波大学, 生存ダイナミクス研究センター, 助教 (30722699)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 内部寄生蜂 / ニホンアソバラコマユバチ / 寄生 / 細胞死 / 宿主 / キイロショウジョウバエ |
研究実績の概要 |
本研究は、内部寄生蜂 Asobara japonica が宿主キイロショウジョウバエ Drosophila melanogaster の幼虫に寄生する際に、宿主幼虫の体内にある将来成虫となる組織(成虫原基)において細胞死を誘導する物質 "Adidas" を同定することを目指している。 平成30年度においては、寄生蜂の成虫をすりつぶして抽出液を作製し、それを非感染ショウジョウバエ幼虫に人為的に注入して細胞死を誘導させる生物検定の実験系を確立した。そして、寄生蜂の毒腺、卵巣、頭部、消化管等の各組織を解剖して、別々に抽出液を作製し、ショウジョウバエの幼虫に注入したところ、毒腺由来の抽出物のみで、成虫原基の細胞死を誘導することができた。この結果は、細胞死誘導活性を持つ成分が、寄生蜂の毒腺に由来することを強く示唆している。 この結果を踏まえて、本研究では、寄生蜂150匹からの抽出液を作製し、それを陰イオン交換クロマトグラフィーにかけて分画し、各分画をショウジョウバエ幼虫に注入することで、細胞死誘導活性成分を分画することを試みた。pH 8.6 の条件で、細胞死誘導活性が陰イオンカラムに一部結合することができたものの、カラムに結合しない画分においても細胞死誘導活性があったため、今後さらに効率よくカラムに吸着させる条件をさらに検討する必要がある。 さらに、寄生蜂が産生する細胞死誘導物質を同定する目的で、先進ゲノム支援の支援を受けて、寄生ハチゲノムの次世代シーケンサーによる解析を行っている。また、宿主側の反応を調べるために、感染した幼虫の成虫原基でのRNAseq解析も行っている。次年度は、さらなるデータ解析を行うことで、物質同定を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究において、蜂の寄生に拠らない生物検定の確立と陰イオン交換クロマトグラフィーの実験系の確立は大きな進展である。一方、物質同定の条件出しにはまだ時間が必要である。さらに、ゲノムデータの解析やRNAseq 解析は、申請者にとっては新しい挑戦であり、今後の新展開を大きく期待するところである。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、陰イオンカラムだけではなく、陽イオンカラムを用いて寄生蜂抽出液を分画し、そのパターンを解析することで、細胞死誘導活性成分を分画、精製できる実験を行う予定である。また、分画できた抽出液をSDS-PAGEで展開し、銀染色を行うことで、活性成分のタンパク質の大きさを見積もる予定である。 一方、別のアプローチとして、ハチのゲノム解析を先進ゲノム支援のご助力を引き続き賜わって行う。また、RNAseq解析により、成虫原基において細胞死を誘導する分子をコードする遺伝子群の発現変化に着目する。ショウジョウバエの非感染幼虫の遺伝子発現プロファイルと感染後30分または2時間の遺伝子発現プロファイルを比較することにより、細胞死シグナル伝達経路に先んじて応答するストレス応答因子や受容体をコードする遺伝子の発現に差があるものを抽出する。宿主側の受容体が同定されれば、リガンドである寄生蜂由来の誘導物質も予想できると期待される。
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