研究実績の概要 |
Bt菌 TK-E6株に由来するCry46Abはアエロリシン型の新規な殺蚊Cryトキシンであり、他の殺蚊トキシンと混合使用すると殺虫活性が顕著に増強される。本研究ではCry46Abの作用機構を解明する目的でトキシンが人工脂質平面膜上に形成する小孔の性質を調査し、本トキシンがカチオン選択的な小孔を形成すること、また変異導入によって小孔のカチオン選択性を上昇させるとアカイエカ幼虫に対する殺虫活性も上昇することなどを明らかにしている。そこで本年度はCryトキシンの大部分(90%程度)を占める3ドメイン型Cryトキシンン(Bt菌亜種israelensis由来のCry4Aa, Cry4Ba, Cry11Aa、亜種jagathesan由来のCry11Ba)についても形成する小孔の性質を調査した。 組換え殺蚊Cryトキシは大腸菌で生産し、トリプシン処理等を行って活性化させた。人工脂質平面膜を用いた電気生理学的な解析(シングルチャネル解析)を行った結果、全ての組換えトキシンがCry46Abと同様にカチオン選択的(K+ > Cl-)な小孔を形成した。また興味深いことに小孔が優先的に透過させるカチオンの種類はトキシン毎に異なることが明らかになった。具体的に説明すると、Cry46Ab小孔における優先順位はNa+<K+, Na+<Ca2+, K+>Ca2+であるが、Cry4BaとCry11AaではNa+<K+, Na+<Ca2+, K+<Ca2+、Cry4AaでNa+>K+, Na+>Ca2+, K+>Ca2+、Cry11BaでNa+<K+, Na+>Ca2+, K+>Ca2+となっていた。カチオンの細胞内流入は浸透圧ショックのほかアポトーシスなどの細胞死を誘導する可能性があり、Cryトキシンの殺虫活性はこれらが複合的に組み合わされた複雑な機構で引き起こされる可能性が示唆された。
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