研究課題/領域番号 |
18K05680
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研究機関 | 南九州大学 |
研究代表者 |
新谷 喜紀 南九州大学, 環境園芸学部, 教授 (50389574)
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研究分担者 |
陰山 大輔 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 上級研究員 (60401212)
菅野 善明 南九州大学, 公私立大学の部局等, 教授 (60441929)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ハスモンヨトウ / 性比異常 / オス殺し / ウイルス |
研究実績の概要 |
我々は2015年秋に宮崎県都城市で採集した農業害虫であるガ類のハスモンヨトウから,雌に偏った性比異常を示す系統を発見して累代飼育をしてきた.昆虫の性比異常について,細胞内共生細菌が宿主のオスのみを死に至らしめる「オス殺し」が数多く報告されている.一方で,ウイルスが性比異常を引き起こすと疑われる報告例もわずかながら存在し,オス殺しが報告されている.ハスモンヨトウの性比異常のメカニズムはオス殺しであり,その原因因子は母系伝播性のウイルス(SlSRVと命名)であることを発見した.SlSRV感染系統では,非感染系統と比較して孵化率が半減すること,孵化幼虫がすべてメスであることから,胚期にオス殺しが起きていることが確認された.また,非感染系統の幼虫にSlSRVを接種すると,成虫の性比がメスに偏ったため,蛹期にもSlSRVによるオス殺しが起こりうると考えられる. SlSRVのゲノムにコードされるRNA依存性RNAポリメラーゼのアミノ酸配列を用いて系統解析を行ったところ,SlSRVはTombusviridaeやCarmotetraviridaeに近縁であることが分かった.SlSRVの類似配列は様々な昆虫のTSA databaseから見つかることから,SlSRVの近縁種が昆虫間に広く分布していることが示唆された. ハスモンヨトウは毎年春から夏にかけて西日本に飛来し,その後日本で数世代を経過するとされるが,日本本土での越冬は稀だとされる.このような生活史を持つ本種において,性比異常系統の個体が再捕獲できるかについて調べた.2019年から2021年の夏から秋にかけて都城市近辺で野外からハスモンヨトウの雌成虫を採集し,原因因子の検出のための診断PCRを行ったところ,1~2%程度の個体からSlSRVが検出された。
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