研究課題/領域番号 |
18K05687
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
淺野 玄 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (30377692)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 外来種 / 避妊 / ワクチン / アライグマ / マングース |
研究実績の概要 |
マングースとアライグマに対する経口避妊ワクチン開発においては、ワクチンの避妊効果の検証が必要がある。しかし、両種ともワクチン投与した雌を用いた自然繁殖は容易ではなく、人工授精などの技術を確立しておく必要がある。本年度は、両種の人工授精法確立に関する実験を行った。 マングースでは、ホルモンを用いた排卵誘起法の確立を試みた。雌マングース33頭を用い、妊馬血清性ゴナドトロピン(eCG)投与後にヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)を投与した。その後、安楽殺処分を行って卵巣・子宮を摘出し、卵胞成長の有無の評価と卵の回収を試みた。その結果、eCG (50-200 IU),hCG (50-200 IU) の投与により、卵胞の顕著な発育が確認されたものの、排卵を示す所見は得られなかった。その要因としてhCGの作用時間や光刺激による排卵抑制の可能性が見出された。hCGの作用時間の延長 (25-36時間)、光刺激や実験時期の調節、ホルモン剤の至適用量の検討、などが今後の課題と考えられた。 アライグマでは、人工授精に利用する精液の凍結保存法として、死亡個体からでも採材可能な精巣上体からの精子の採取法および凍結保存法の有用性について検討した。10月に捕獲・安楽殺処分されたアライグマ19頭の精巣を用いた。精子の採取および凍結保存方法はイヌおよびツキノワグマにおける報告を参考にした。採取した精子を液体窒素にて凍結し、凍結前後の精子性状の変化を評価した。その結果、12頭から精子採取が可能であった。凍結前の精子性状では、奇形率を除く全指標で対照に用いたイヌの精巣上体精子の方が有意に高く、アライグマ精巣上体精子の採取方法には改良の余地があった。一方、凍結前後での精子性状の変化率は両種の間に有意差は認められなかったが、いずれも凍結による影響が大きかった。今後、精子の採取および凍結保存法に改良が必要と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マングースについては、沖縄県やんばる地域での飼育個体を用いた実験が必要となる。当該地域では、マングースの密度が極めて低下してきており、捕獲個体の確保が容易ではない。また、設備・機器としても、多数個体を用いた実験が行いにくい状況である。一方、アライグマについても、飼育個体の確保が思うように進んでいない。3頭程度の個体しか同時に飼育できない設備を利用していることも要因の一つである。これらの課題を踏まえて効率的に実験を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
マングースについては、捕獲個体の確保を行いつつ、ホルモンを用いた発情誘起の追加実験を沖縄県にて行う予定である。アライグマについては、精巣上体精子の保存方法の改良を行うとともに、雌の人工繁殖法開発に着手する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた実験が計画通り進まなかったこともあり、2018年度の研究費使用は予定よりも少ない支出となった。その主な理由として、マングースおよびアライグマとも捕獲個体の確保が不足し、飼育個体を用いた実験が予定通り実施できていないことがあげられる。2019年度は、捕獲個体の確保と実験を推進する予定である。
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