研究課題/領域番号 |
18K05687
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
淺野 玄 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (30377692)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 外来種 / 避妊 / ワクチン / アライグマ / マングース |
研究実績の概要 |
本研究では,アライグマとマングースをモデルにした避妊ワクチン開発を試みている。ワクチン抗原で免疫した雌を飼育下で雄と交尾させ,避妊効果を検証することが理想であるが,両種とも飼育下での繁殖は容易ではない。そのため,避妊効果を検証するための人工授精などの技術の確立をする必要がある。 2019年度は,アライグマの人工授精法確立に関する実験を行った。すなわち,人工授精に利用する精液の凍結保存法として,捕獲個体からも採材が可能な精巣上体精子に着目し,アライグマの繁殖期(2~3月)と非繁殖期(4~10月)における精巣上体精子の性状を比較し,精巣上体精子の採取および凍結保存に適した時期の解明を行った。 2019年2~10月に駆除されたアライグマ47個体より得られた精巣を用いた。得られた精巣から,イヌにおける方法を参考にして精巣上体精子を採取し,精子濃度および凍結前後の精子性状を検査した。47個体中40個体から精巣上体精子を採取できた。精子が採取できなかった7個体は全て非繁殖期の捕獲個体であった。凍結前の精子性状は繁殖期およびその直後にあたる2~4月に最高値となり,その後低下する傾向がみられた。凍結後についてもほぼ同様の傾向がみられた。凍結前後の精子性状の変化率は,繁殖期が非繁殖期より有意に高く,繁殖期に捕獲された個体から採取した精巣上体精子がより耐凍性が高いことが示唆された。これらのことから,アライグマ精巣上体精子の採取および凍結保存は,繁殖期の捕獲個体の精巣を利用することが推奨された。しかし,繁殖期を含む冬期はアライグマの捕獲効率が低下するため,精巣の確保は必ずしも容易ではないことを考慮しておく必要がある。今後は,繁殖期に採取および凍結保存した精巣上体精子を用い,人工授精法を確立することが課題となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
マングースについては,分布地である沖縄県やんばる地域での飼育個体を用いた実験が必要となる。しかし,繁殖期である冬期に,新型コロナウイルス感染拡大によって2019年度は実験を行うことができなかった。また,同様の理由でアライグマについても,2020年度は飼育個体の確保が行えていない状況である。 また,2020年2月に,本研究成果を横浜での国際シンポジウムにて発表予定であったが,新型コロナウイルス感染拡大によって中止となり,2020年度での開催も未定である。
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今後の研究の推進方策 |
マングースもアライグマも,避妊ワクチン開発に際しては,繁殖に適した時期に飼育個体を利用た実験が必須となる。新型コロナウイルス感染拡大により,飼育個体を得るための野外調査そのものが長期間行えなかったことから,研究計画の大幅な修正が必要となっている。2020年度が最終年度であるが,既存の保存材料や研究データの再分析などを実施するとともに,残された期間で可能な限り野外調査や実験を行い,研究成果を蓄積する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大により,計画していた野外調査が実施出来なかった。さらに,2020年2月に予定してた国際シンポジウムも中止となるなど,研究費が計画通り使用できなかった。 最終年度の2020年も,避妊ワクチンの研究協力者がいるニュージーランドへの研究渡航が現段階では未定であること,参加を計画していた全ての学会大会の中止がすでに決定しているなど,研究費の使用計画を修正する予定である。
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