研究課題/領域番号 |
18K05687
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
淺野 玄 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (30377692)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 外来種 / 避妊 / ワクチン / アライグマ / マングース |
研究実績の概要 |
本研究では、アライグマとマングースをモデルにした避妊ワクチン開発を試みている。2021年度は、アライグマ卵透明帯を構成する3つの蛋白(ZP2、ZP3、ZP4と考えられる)のうち未解明のZP4の塩基配列の解読と卵透明帯ZP3由来の避妊ワクチン抗原候補を雌アライグマに免疫して抗原としての有用性を評価する動物実験を実施している(継続中)。一方、マングースについては、COVID-19の感染流行による渡航制限のために、動物実験に利用できる個体の生体捕獲調査と飼育実験を実施することができなかった。 アライグマに関する主な成果は以下の通りである。アライグマ卵巣から、定法に従ってtotal RNAを抽出して逆転写反応によりcDNAを得た。既に報告されている近縁種のイヌのZP4の塩基配列を参照して複数のプライマーを設計し、PCRを行いDNAを精製した。精製したDNAをシーケンス解析して塩基配列を解読した。さらに、既に報告されている他種のそれとの相同性を比較し、種特異性やワクチン抗原としての有用性を評価した。その結果、アライグマにおいてもZP4が存在することが初めて確認され、アライグマZP4の配列も一部(771bp)解読された。解読部分の塩基配列における他種との相同性は、オコジョと92.1%、ケナガイタチ91.9%、イヌ89.6%、キツネ88.6%、ネコ86.4%、ヒト80.9%であった。しかし、解読部分の配列のみからは、アライグマ種特異性の点ではワクチン抗原としての可能性は必ずしも高くはなかった。今後は、アライグマZP4の全塩基配列の解読を行い、種特異性と抗原性が高いワクチン抗原候補部位の検索を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
マングースについては、飼育設備のある沖縄県やんばる地域で、飼育個体を用いた実験を行う計画であったが、 COVID-19感染拡大によって繁殖期である冬期に飼育実験を行うことができなかった。また、同様の理由でアライグマについても、免疫実験に適した時期に生体捕獲調査が実施できず、飼育実験の開始が遅れた(現在は実験を開始している)。また、成果発表を行う予定であった国際学会の延期やニュージーランドの海外研究協力者との研究打ち合わせおよび現地調査のための海外渡航ができなかったため、2022年度に渡航予定である。
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今後の研究の推進方策 |
避妊ワクチン抗原の実験には、マングースもアライグマも繁殖に適した時期に飼育個体を利用した実験が必須となる。COVID-19感染拡大により、飼育個体を得るための野外調査そのものが長期間行えなかったことから、アライグマを中心に2022年度にまたいでワクチン抗原の開発を進める予定である。具体的には、既知のZP3由来あるいは新規に解明したZP4由来の抗原をアライグマの生体に免疫し、ワクチン抗原としての有用性を評価する。 また、COVID-19感染状況と渡航規制の条件を考慮しながら、2022年度に国際学会での研究成果報告とニュージーランドの海外研究協力者との研究打ち合わせや現地調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19感染拡大により、計画していた国内野外調査や海外現地調査が実施できなかった。さらに、2021年度に成果発表を行う予定であった国際学会も延期となり、研究費が計画通り使用できなかった。1年間の研究期間の延長と予算繰越を認めて頂いたため、国内の野外調査を随時実施して実験を進めて研究費を適切に執行したい。また、国外渡航については、可能な限り渡航を試みるが、不可能な場合にはオンラインでの研究打合せも含めて検討を行う。
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