寄生種がスジエビ類に対する生態的影響 : 2018年-2019年に滋賀県彦根市の農業用水路で採集された淡水エビ類に対するエビノコバンの寄生状況の解析をおこなった。合計944個体のスジエビと279個体のカワリヌマエビ類が採集され、これらの宿主の頭胸甲の外部に203個体の未性熟なエビノコバンが付着していた。平均寄生率は、スジエビで23.1%、カワリヌマエビ類で6.4%であった。スジエビに対するエビノコバンの新規寄生は、8月に確認され(寄生種の最小体長3.2 mm)、翌年6月まで継続的に出現し(最大体長10.3 mm)、7月には観察されなかった。これに対して、カワリヌマエビ類に対するエビノコバンの新規寄生は8月に確認され(最小体長2.0mm)、同年11月まで(最大体長5.8mm)観察された。 エビノコバンの体長と宿主エビ類の頭胸甲の長さの比率は、成長にともなってほぼ一定(0.8-0.9)であった。 エビノコバンの新規寄生は、スジエビとカワリヌマエビ類の双方で観察されたが、寄生種の体長が6mmを超える個体の主要な宿主はスジエビであることが判明した。さらに、2020-2021年に島根県でスジエビ、愛媛県でチュウゴクスジエビ 、および岡山県でカワリヌマエビ類の頭胸甲の外部に寄生したエビノコバンを採取し、宿主の頭胸甲長と寄生種の体長を測定したところ、それぞれ両者には有意な生の相関が確認された。また、エビノコバンの最大体長は、滋賀県の事例と同様スジエビに寄生した場合に大型化する傾向がみられた。スジエビ類および寄生種の流通状況:広島圏内の釣具店において調査したところ、エビノコバン は確認できなかったものの、スジエビにチュウゴクスジエビ が混入して販売されていた。
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