ベッコウトンボは絶滅が危惧されるため、保全措置が急務である。しかし、本種の移動能力は極めて弱く、主要な生息地での生息地分散は確認されておらず、今後も自力での生息地分散は期待できない。したがって、本種の生息域拡大には、保護増殖をもとにした人為的生息地外導入が最も現実的な措置となると考えられる。 本研究では、ベッコウトンボの人為的生息地外導入を念頭に、導入先選定法の提案を行う。導入先の選定法としては、本種が現在生息しているため池とその周辺のため池の環境条件を詳細に調査し、現在のベッコウトンボが棲んでいるため池と環境が近いため池を特定し、その池を導入適地として提示する。 ベッコウトンボが棲んでいるため池と環境が近いため池を特定するために、ベッコウトンボが生息する2か所のため池とその周囲の約40か所のため池で調査を実施することとした。既存研究では、ベッコウトンボの生育に影響を与える要因として、ため池の水深、解放水面の存在、抽水植物の存在、休息地・採餌場となる周囲の草地の存在、外来種の脅威などが挙げられているため、それらに関わる地理的要因(ため池面積など3要因)、環境要因(水深50cm以下の面積など7要因)、生物間相互作用(外来種の在・不在など2要因)について、現地調査を実施した。 当初は、調査で得られた結果をもとに、各池を環境条件ごとに2次元マップに配置し、クラスター分析により似た環境のため池を類型し、現在ベッコウトンボが再生産する2つの池と環境の近いため池を導入先として適性が高いため池として提示する予定であった。しかし、研究代表者が所属を変更することとなったため、やむを得ず研究を中断することとなった。この時点では、統計解析ができるほどのデータを取得できていなかったため、2次元マップの作製はできていない。現在は、取得したデータの譲渡・活用が可能な研究者を探索している。
|