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2018 年度 実施状況報告書

両生類の新興病原体「ラナウイルス」はどのように拡散するのか?

研究課題

研究課題/領域番号 18K05692
研究機関岡山理科大学

研究代表者

宇根 ユミ  岡山理科大学, 獣医学部, 教授 (40160303)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードラナウイルス / 両生類 / 新興感染症 / 起源
研究実績の概要

2011年頃より、国内野生下両生類においてラナウイルス検出地域の増加ならびに保有率上昇を確認したことから、その機序解明を目的として、国内のラナウイルスの起源、自然界での維持状況ならびに拡散方法について調査・研究を行い、併せて、在来両生類への影響を評価し、生態系保全のための有効な対策を検討することとした。1)自然界のラナウイルス分布と感染状況の把握:離島を含む、複数の地点で検体採取を行い、保有率を検索した。ヒキガエル保有率(9都道県、17地区、n=176):保有率は平均23.3%(0~80%)で、8道県でラナウイルスが検出され、初めて北海道で確認された(平均14.3%)。また、50%以上の保有率を示した3か所のうち2か所は個体数の減少が確認されている地域であった。近年、国内各地でヒキガエルが減少している。海外ではラナウイルス侵入と両生類個体数減少との関連が報告されており、継続的モニタリングが必要である。2)自然宿主、待機宿主および増幅動物の特定:ラナウイルス保有率の高いヌマガエルの自然界での役割を明らかにするため、野外採取ヌマガエルを単独飼育し(17匹)、2カ月毎に指端を用いて検査した。その結果、導入時の保有率は陽性6匹、陰性11匹であった。観察期間中通じて一貫して陰性の個体が3匹いたが、陽性個体はいなかった。陰転、陽転を繰り返した個体が8匹おり、徐々に陰性期間が延長し、陽性個体が減少し、最終的に1匹となり、発症個体はなかった。検出ウイルスには2種類の遺伝子タイプがあったが、採取時期、採取場所による違いはなく、さらに、時期によって1個体から検出されるウイルスタイプが異なった。今回の検索によって、ヌマガエルはラナウイルスに長期不顕性感染するが、その保有率が低下することから、ヌマガエルは自然界では増幅動物ではなく、維持動物として役割を担っている可能性があることが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

野生動物を対象とする場合、検体の入手が調査、研究の重要なポイントになる。特に本研究が対象とする両生類は季節性があり、採取の時期が限られている種類も多く、時期を逃すと採取できなくなる。しかし、各地域の研究協力者の支援を受けて、研究に必要な種類と個体数の確保ができ、順次、解析を進めることで結果を得られる。また、ヒキガエルに関しては新知見を得られたことから、個体数の減少との関係を検討して予定である。

今後の研究の推進方策

1)自然界でのラナウイルス維持状況の把握と両生類への影響評価 2018年度に、ヌマガエルが自然界におけるラナウイルス維持宿主であることを検証し、新たにヒキガエル個体数減少にラナウイルスが関連する可能性を見出したことから、ヌマガエルをモニター動物として、引き続きラナウイルスの自然界での推移を把握するとともに、今回、初めて北海道でも確認したことから、今までラナウイルスが検出されなかった東北地方の両生類も対象として、ラナウイルスの国内分布を明らかにする。ヒキガエルについてはラナウイルス保有調査を強化し、調査地の個体数との関連を検討して、ヒキガエルへの影響を評価する。本種を対象とする際には、侵襲性の低い採取方法を採用し、すでに個体数が減少している地域については、地域の研究者の協力を得て個体数の変化を把握するとともに、調査地区の選定を慎重に行い実施する。また、継続海洋島調査地である伊豆大島に、ヒキガエルが大量発生している八丈島を加えて、ラナウイルス侵入、拡散の経路を検討する。なお、侵襲性の低い方法として指端を用いる予定であるが、ヒキガエルを用いてその有効性について検討する。
2)自然宿主および増幅動物の特定 両生類と同所的に生活する動物における保有状況を検討する。海洋島での感染状況を鑑み、鳥類を対象として調査を行う。すでに小動物を捕食する肉食性の種類をノミネートして検体を確保したので、順次、検査を行い、自然宿主の特定を目指す。
3)ラナウイルスの両生類への病原性の検討 ラナウイルスの在来両生類への影響を評価するためには、動物種ごとでの病原性評価が必要である。そこで、今まで分離・樹立したウイルス株を用いて、感染実験によって、評価のための条件(接種量、接種法、評価法;発症率、致死率、ウイルス検出率、病変)の検討、対照動物の選定を行い、各種両生類への病原性を検討する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Epidemic nodular facial myxomatous dermatitis in juvenile Cranwell’s horned frogs (Ceratophrys cranwelli).2019

    • 著者名/発表者名
      Tamukai K, Sugiyama J, Nagata Y, Tsutomu O, Katayama Y, Mizutani T, Kimura M, Une Y.
    • 雑誌名

      Dis Aqua Org

      巻: 134 ページ: 57-64

    • DOI

      10.3354/dao03358

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 私たちがみているものとは2018

    • 著者名/発表者名
      宇根有美
    • 学会等名
      日本爬虫両棲類学会第57回相模原大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 若齢クランウエルツノガエルにおける顔面粘液腫症様病変の流行2018

    • 著者名/発表者名
      田向健一、杉山淳一、永田雄大、宇根有美
    • 学会等名
      第17回爬虫類・両生類の臨床と病理に関するワークショップ
  • [学会発表] 飼育下野生動物やエキゾチックアニマルの食餌性代謝性疾患2018

    • 著者名/発表者名
      宇根有美
    • 学会等名
      第1回飼育動物栄養研究会
  • [学会発表] 爬虫類の感染症の病理2018

    • 著者名/発表者名
      宇根有美
    • 学会等名
      エキゾチックペット研究会創立20周年記念セミナー
    • 招待講演

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公開日: 2019-12-27  

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