研究実績の概要 |
これまで、マウス体細胞核移植技術の普及により、希少動物や絶滅危惧種の保全、絶滅動物の復活への横断的研究が可能となった。しかし、卵子を得ることが困難である動物種や高齢化による生殖細胞自体の回収が困難な動物個体においては、近縁種の卵子を使用した異種間核移植技術の確立と分子遺伝学的解析技術の確立が必須であり、さらなる研究を遂行する上で当該技術の効率化は極めて重要である。最近、申請者らの共同研究グループは、マウス体細胞核移植胚の発生率を劇的に改善し「産子発生の向上」ならびに「初期化抵抗性遺伝子群の同定」とその作用機序を明らかにした(Azauma et al.,2018)。 本申請では、本方法を異種・異属間核移植操作に応用し、効率的な異種間クローン胚の作出を行うことで生殖細胞に依存しないユニバーサルな遺伝資源の保存方法を確立する。 アカネズミドナー細胞を用いて作製した融合卵子は、93%(93/100)の卵子が早期染色体凝集を形成した。活性化処理後、78%(78/93)の卵子が前核構造の形成を認め、83%以上が2細胞期胚へ発生した。核移植後の前核期卵子および2細胞期胚を免疫細胞染色した結果、H3K9me3の蛍光輝度は、TSA,VC未処理区と比較して、前核期卵子では有意に上昇し、2細胞期では有意に低下した。さらに、2細胞期胚内におけるH3K4me3の蛍光輝度は、TSA,VC未処理区と比較して低下した。これまでに、同種間核移植由来2細胞期胚は、体外受精由来胚よりもH3K4me3の発現が高いことが知られている(Zhang et al., 2009)。本実験より、アカネズミ-マウス異属間核移植胚内におけるヒストン修飾はダイナミックに変化していることが示唆された。
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