研究実績の概要 |
これまで、マウス体細胞核移植技術の産児作出効率の向上によって、希少動物や絶滅危惧種の保全、絶滅動物の復活への横断的研究が可能となった。当該研究課題においても、マウス体細胞核移植胚の発生率を劇的に改善し「産子発生の向上」ならびに「初期化抵抗性遺伝子群の同定」とその作用機序を明らかすることにより、新規核移植法としてJoVE誌へ本法を公開した(Azauma et al.,2018)。 次に、異種間核移植法によるエピジェネティックリプログラミングの動態変化について、アカネズミから初代培養により得たドナー細胞を用いて、新規核移植法により作製した融合卵子を活性化処理後、再構築胚を作製しH3K9me3の動態を確認した。これらの結果、異種間(iSCNT)クローンへ供試するアカネズミ由来細胞の培養下へ添加するVC処理条件(optimal condition)を検討することによって、H3K9me3を低下させる知見を得た。これらの成果は、Journal of Reproduction Developmentに公開された(Azuma et al.,2020)。 また、他動物種の体細胞(組織由来線維芽細胞)を用いて細胞内でおこる代謝経路と体細胞核移植に起こる代謝経路の存在を確認するため、マウスGV期卵子を用いて、未成熟な卵子から成熟時に係るグルタチオン-アスコルビン酸回路で補酵素として働くPyrroloquinoline quinoneがその後の発生に与える影響を調べた。結果、体外成熟培地内での10-20マイクロモル添加Pyrroloquinoline quinoneによりSOD2の相対的発現量の上昇を確認し、DNAメチル化の変化に寄らない細胞内経路の存在を明らかにした。
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