研究課題/領域番号 |
18K05694
|
研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
池谷 祐幸 岡山理科大学, 生物地球学部, 教授 (10391468)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 栽培植物 / 観賞樹木 / バラ科 / 遺伝的多様性 |
研究実績の概要 |
本研究は江戸時代以前に導入されたとされる木本性栽培植物の日本国内における遺伝的変異の解明のため,そうした栽培植物の残存状況の把握をまず目指すものである。が,特に対象となる植物が多いバラ科の樹木を主要な材料とした。 昨年度に全国の主要植物園及び大手植木業者約70社に対して行った聞き取り調査に基づき、本年度は、中部地方以西の公的植物園10園および苗木を自家生産している植木業者4社などを訪問し、バラ科木本性栽培植物の調査と研究試料調査を行い、約300点の試料を採取することができた。しかし、調査対象として想定した約30種のうちキイチゴ属などの数種は栽培している所がなかった。また、前年の調査で明らかになっていたが、ほとんどの栽培株の由来は不明であった。植木業者からの聞き取り調査をまとめると、珍しい樹種の苗木生産の産地は一定ではなく、生産業者も販売業者も、需要の生じた際に全国から苗を入手することを繰り返しているので、由来等は分からないであろうとのことであった。 また、草本植物として研究対象に加えたイセナデシコについて,京都市と松阪市で栽培個体の開花調査を行った他、岡山市と津市で野生個体の調査を行った。さらに、日本国内での自生地が限定され、かつ絶滅危惧種であるシロヤマブキが多くの植物園で栽培されていたため、本種も収集対象に加えた。本種は栽培植物としても広く流通しているため、遺伝的多様性を調査することで、その起源の解析や野生個体の保全に資する可能性があるためである。 さらに、苗木業者の調査については、昨年度の調査ではデータ不足であるため、本年は植木業者に加え果樹種苗業者も対象として約400社に対してアンケートを行い、約100社から回答を得た。しかし、自社生産をしている業者は十数社であり、生産樹種もボケ、カリン、モッコウバラなどに限られていた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度の調査で、国内の植物園や種苗業者には対象となる植物の古い個体がほとんど残存しないことがすでに判明していたが、今年度の訪問調査では、新しい個体でも由来はほとんど不明なこと、特に珍しい植物は苗木生産もされていないことなどが判明した。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度はコロナ禍のため、少なくとも春期の訪問調査は難しくなっている。一方で昨年度のアンケート調査では100社以上から回答を得たため、メール等による聞き取り調査や文献調査を充実させる。 また、昨年度に収集対象に加えたシロヤマブキについて、岡山県内の自生地において自生状況などの調査を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
植物園や苗木生産業者に植栽年代の古い樹木が殆どなく、また苗木生産業者の場合、個々の業者で自家製生産している樹種が少なく、効率的に現地調査を行うことに困難な場合もあった。このため現地調査の回数が予定より少なくなり、次年度使用額が生じた。 この額については,本年は現地調査だけではなく、文献調査などによる調査方法の拡大を計画し、それに使用する。
|