研究課題/領域番号 |
18K05696
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
徳岡 良則 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, 主任研究員 (20442725)
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研究分担者 |
岡 三徳 東京農業大学, その他部局等, 教授 (10354028)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 植物方言 / 境木 / 生垣 / 在来品種 / 伝統作物 / 工芸作物 / 段畑 |
研究実績の概要 |
本研究では、有用植物の遺存状況に加え、植物方言、栽培技術や生態情報、伝統的利用法を複合的に照らし合わせることで有用植物の伝播過程を推察するとともに、有用植物の効率的な保全区域を提示することを目指している。
今年度は愛媛県南部の段畑地域に細々と残る外来イネ科草本のベチベルソウおよび愛媛県大洲市肱川沿いの畑地境界に植裁される境木について、植物の分布パターン、植物方言、伝統的利用法を照らし合わせ考察し、論文を公表した。ベチベルソウは1950年代以降に防風や土壌侵食防止を目的に導入された植物であることが明らかとなった。大洲市の境木について、植物方言や実際の植裁樹種転換の証言から、ボケが過去には最も多く植裁されていた樹種だった可能性が示された。また境木の一部にはクワやコリヤナギなど過去に畑地内で作物として植裁されていたものや、オオタチヤナギやアカメヤナギといった周辺に自然分布する樹種も利用されていることが明らかとなった。用いられる樹種には集落間で違いがあり、上流域から下流域に掛けて広く境木の利用文化を保全していく取り組みが望まれる。
在来作物の分布について愛媛県中部の平地から山間地に掛けて予備調査を行った。過去には多様な作物の在来品種が各地域で生産されていたようだが、現在は直売所で販売される野菜や地域のイベントで出品する雑穀および豆類が特定地域に遺されている傾向が見られた。ただし事例数が限られるため次年度以降も調査を継続し、効率的な調査方法を検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
天候等の関係で現地調査の機会を十分に設けられなかった。次年度以降、調査機会を確保し研究を進めたい。
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今後の研究の推進方策 |
ベチベルソウや境木の研究実績から、植物方言を軸に、植物生態、栽培情報、かつての利用法を複層的に照らし合わせることで、有用植物や農業景観の来歴の一端を解明できることが示された。特に境木は畑地景観の中で視覚的に目立つため地域住民から広く認識されており、かつ工芸作物や自給利用されていた有用植物も含まれるため、証言を集めやすいことがわかった。この利点を生かし、より広い地域を対象に境木の利用文化を比較検証し、本研究で用いる研究手法や保全地域の提案方法の検討に役立てたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として調査出張の機会が十分に設けられなかったことがあげられる。
これらの金額と次年度以降に請求する研究費を合わせた使用計画として調査出張の機会を増やすことを計画している。
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