研究課題/領域番号 |
18K05701
|
研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
山本 信次 岩手大学, 農学部, 教授 (80292176)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | シイタケ原木 / 野生動物管理 / 野外レクリエーション / 薪利用 / 放射性物質拡散 |
研究実績の概要 |
前年度は被災地域における薪利用・シイタケ原木利用・野外レクリエーション利用や野生動物管理の実態、有機農家の地域資源利用などについて調査を実施できた。 放射性物質拡散の影響としてシイタケ原木として地元の里山利用ができなくっていること、狩猟者が狩猟を行う地域を変更している例があること、有機農家がその農業生産の中で地域資源の循環的利用をやめざるを得なくっている例などが確認された。 またこうした影響の回避において、生産物販売の側面では原料の他所からの入手といった生産は再開すれども地域資源との関係性の切断が起きていること、また「風評」的被害の回避においては顧客との緊密なコミュニケーションなどが重要であることが明らかとなった。 ただし、こうした産業的な生業と異なり、マイナーサブシステンス的な地域資源利用程被害がありつつも補償などがなされていない点や被害からの回復が難しい点なども明らかとなりつつある。 また海外における調査では、汚染はいまだ継続中でありつつも、日本における原発周ほどの高濃度汚染でない地域においては、おおむね資源利用が回復しつつあることも確認できた。具体的には西ヨーロッパ中部地域では一部キノコや野生鳥獣利用に制限があるものの、日常的な森林利用などにおいてはほとんど意識されておらず、専門家レベルの認識も同様であっつた。 今年度は調査対象を絞り込んで深めつつ、昨年度調査実績の報告・論文化を並行して進める予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は研究実績の概要で述べたように、当初予定よりも幅広い分野(原木シイタケ・薪・野生動物・野外レクリエーション・有機農家の資源利用など)において調査を行うことができたことから計画以上に研究を進展できたものと判断している。 その結果として、放射性物質拡散が農山漁村における種々の自然資源・地域資源利用に広範に影響を及ぼしていることが明らかとなりつつある。 また、そうした影響は商品生産的地域資源利用の取り組みとマイナーサブシステンス的地域資源利用の取り組みでは異なる離京をもたらしていることも明確になりつつあり、自然科学的に数値で把握可能な放射性物質汚染状況とは別に被災地域における自然と人間の関係性の質的な部分への着眼を強めることの重要性が明らかになったといえるだろう。 こうした点に鑑みて、今年度予定よりも幅広く得ることのできたデータの解析を順次行い、順次報告・論文化などをすすめたいと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度の調査が予定よりも進んだため、前年度のデータ解析を着実に進め、報告や論文化に力を入れたい。 前年度の調査が予定よりも進んだものの、それ自体が新たな調査課題を指名してくれている点もあり、また継続的調査の重要性に鑑みて、今年度も被災地における聞き取り調査を着実に進めていく予定である。 また前項で触れたように「被害」は放射性物質による汚染状況の濃淡のみによって現れるものではなく、被災地域における地域住民の自然資源・地域資源との関係性のあり方によっても大きく左右されることが明らかとなっており、こうした点に着目しつつ、さらに調査を継続していく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ごくわずかな端数のため使い切らず次年度に繰り越した。
|