2020 年度実施状況報告書

「地域資源」としての都市緑地のあり方に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号	18K05703
研究機関	國學院大學
研究代表者	下村彰男國學院大學, 研究開発推進機構, 教授 (20187488)
研究期間 (年度)	2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード	地域資源 / 資源管理 / 都市緑地・公園 / 歴史的文脈継承 / 自然的文脈継承 / コミュニティ再構築
研究実績の概要	本研究は、都市緑地の社会・文化的側面への認識が高まり、地域の個性や特性に関する再認識や洗練、そして地域コミュニティの再構築や自立を支援する「地域資源」としての位置づけがなされてきたことが背景となっている。そして、都市緑地が地域の価値を高めていくうえで、①地域の自然的・歴史的文脈をいかに継承すべきなのか、また、②地域コミュニティの再構築にいかに貢献し得るのか、の2点について、現状を把握するとともに、その方法論に関する検討を深めることを目的としている。 2019年度までは、特徴的な都立公園におけるプレ調査を進めながら、上記の視点からの都市緑地の現状を把握する上での適切な調査対象を検討するとともに、地域の自然的・歴史的文脈の継承のあり方に関する仮説的な枠組みを想定した際の調査項目（調査シート）について検討を進めてきた。そして今年度、対象地として取り上げた、区立・市立まで広げた中規模以上の近隣公園を調査を通して、上記①②の観点から、現時点における都市公園の状況を把握するための枠組みについて検討・明確化を行った。まず、「土地の文脈の継承」に関して、「歴史的文脈」については、各時代の状況そして特に災害と関係が深く、その文脈を把握する中項目としては、樹木・並木、構造物・施設、土地利用・地割、歴史的デザイン、説明板を抽出することができ、「自然的文脈」に関しては、植栽、生物多様性、施設、その他デザイン処理、土地利用、説明板の各中項目を抽出することができた。また、「コミュニティの拠点」に関しても2項目に区分し、拠点施設の状況把握の中項目としては、拠点施設、商業施設、また、情報提供に関する状況把握に関しては、情報提示施設、イベントを抽出することができた。
現在までの達成度 (区分)	現在までの達成度 (区分) 4: 遅れている理由今年度は、調査対象地として、区立・市立まで広げた中規模以上の近隣公園を取り上げ、また、下記のような調査シートを確定し、本調査を実施したが、コロナ禍の影響により50ヶ所弱にとどまり、現状を把握分析する上で必要と判断した100ヶ所程度の調査数に至らなかった。調査対象地に関しては、当初、公園の規模や都内での総数の観点から都立公園が適切であると判断していた。しかしながらプレ調査を重ねた結果、本研究で検討する観点（地域の自然的・歴史的文脈継承のあり方、地域コミュニティの強化・再構築）点から、調査対象として中規模以上の近隣公園を取り上げることとした。都立公園の場合は一般的に利用者の誘致圏域も広く設定しているのに対し、区立・市立公園の場合は、土地や地域により密接に関わり、利用者に関しても基本的に地域住民を想定していることから、公園内に整備・設置される諸要素も地域と関わりの深いものが多い。そこで、都内の平野部、台地部、そして両者の境界部などの立地環境、また近世から現代にいたる江戸・東京の歴史にも配慮したうえで、対象近隣公園を設定した。また、調査シートに関しては、現地調査前の事前調査シート（情報整理票）、現地調査における記録シート、そして現地調査後における結果のとりまとめシートの、3種類のシートフォーマットを作成し、現地調査を進めた。現地調査前に、地域の地形図や切り絵図等を収集し、地域の歴史および自然条件について、文献や地図、空中写真等の資料収集を行ったうえで、現地調査の際に、都市緑地（公園）の諸要素との関係について分析しつつ記録を行った。また、コミュニティの拠点化に関しては、集会施設や商業施設の設置を期待したものの、必ずしも十分な結果をえることができず、情報提供のためのチラシや公園ガイドなど、イベントやボランティアに関する調査範囲を広げ実施した。
今後の研究の推進方策	2020年度は、新型コロナウィルス禍（緊急事態宣言を含）の影響により、都市公園に関する現地での本調査（昨年度までは本調査を行うためのプレ調査を含む準備段階であった）を実施することが難しくなり、十分なデータが得られなくなってしまった。都内を中心に、近隣公園100箇所程度の本調査を想定していたが、50箇所程度にとどまってしまった。 2021年度は、上記した調査を継続して、地域の自然的・歴史的文脈継承のあり方、および地域コミュニティの強化・再構築の観点からの、都市緑地（公園）の現状を把握・分析を実施する。また、合わせて都立公園以外の都市緑地（例えば地域制緑地、街路樹等）についても補完調査し、地域資源として都市緑地が果たす役割と今後のあり方について整理・考察する。同時に、遠隔地における先進事例調査に関しても、新型コロナ禍の影響により実施を見おくっている。当初より予定していた富山、長岡、帯広等における著名な事例を調査し、枠組みの補正に役立てていく。そして、最終的には、これらの調査および検討をとりまとめ、地域資源という観点から都市緑地を評価する方法と，整備や管理・運営に関わる計画論の構築に向けた検討を進め、その布石となるよう研究をとりまとめる。
次年度使用額が生じた理由	コロナ禍（緊急事態宣言を含）の影響により、都市公園に関する現地での本調査（昨年度までは本調査を行うためのプレ調査を含む準備段階であった）を実施することが難しくなり、十分なデータが得られなくなってしまった。都内を中心に、近隣公園100箇所程度の本調査を想定していたが、50箇所程度にとどまってしまっており、2021年度も本調査を継続し、現地調査を進める上で必要な謝金等に研究費を使用する。また合わせて、研究テーマに関する先進事例調査として位置づけている遠隔地への出張調査も補助期間内には実施できておらず、2021年度に事例調査を実施し、今後の都市緑地（公園）のあり方を考察する上での参考とする。