研究課題/領域番号 |
18K05704
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
小柳 知代 東京学芸大学, 環境教育研究センター, 准教授 (80634261)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 生物文化多様性 / 植物資源利用 / 土地利用 / 里山 / 伝統的知識 / 景観変化 / 迅速測図 |
研究実績の概要 |
関東地方を対象として、生物多様性と文化多様性の対応関係を定量的に評価し、ランドスケープ構造の異なる地域ごとに生物文化多様性保全の鍵となる土地利用形態や文化的営みを明らかにすることを目的としている。植物資源利用の多様性を特徴づける土地利用形態の解明(A)、および生物文化多様性保全の鍵となる土地利用形態および文化的営みの解明(B)の2つの枠組みを設定し、2年目には1年目に引き続きA.に関わる植物資源のデータベース整備およびGIS解析を進めた。伝統的な土地利用形態(明治時代の土地利用)および地形条件の違いに応じたランドスケープ区分を行い、タイプ間での潜在的な植物資源の多様性を比較した結果、畑地や水田が卓越する平地のランドスケープでは、植物資源の多様性が相対的に低かった一方で、海沿いや山間地のランドスケープでは地域特有の資源利用を代表する指標種が多く抽出された。また、二次林だけでなく二次草地が卓越する台地・丘陵地タイプで植物資源の多様性が高かったものの、二次草地の消失や二次林の質的な変容等に伴い地域の文化多様性も大幅に低下していることが予想される。これらの結果をB.の枠組みにつなげ、植物資源利用の現状評価をより広域的に行うための調査手法を再検討した。事前の複数地域でのインタビュー調査や文献調査から得られた情報を踏まえて、地域の生物資源利用を特徴づける文化的営みの対象として、地域の神社を主体として行われる祭典や年中行事に着目し、そこでの神饌等を通じた植物資源利用の特徴とその変化を評価することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ランドスケープタイプごとの植物資源利用の多様性と土地利用形態との対応関係の解明(A)については、当初予定していた通り2年間でデータ整備および解析を進めることができた。ただし、植物資源利用の消失実態把握(B)に関して、ランドスケープ区分の結果を踏まえて、当初の予定よりも広域的に行う必要があると判断した結果、調査手法をインタビュー調査からより焦点を絞ったアンケート調査に切り替えることになった。新型コロナウィルス感染拡大の影響(対面でのインタビュー調査には慎重な判断が必要)を踏まえても、この変更は妥当だと考えた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのランドスケープ区分結果(10タイプ)から、それぞれ2,3市町村を抽出し、市町村内に分布する神社における神饌を主とした植物資源利用に関するアンケート調査を実施する。まず千葉県内の対象地においてアンケートの事前調査を行った上で、アンケート項目を再調整し関東広域での本調査を進める。引き続き、植物資源の入手元生態系の量的・質的な変化に関するGIS解析を進め、植物資源利用の変容と対応付けることで、生物文化多様性の一体的な保全に向けた課題を整理していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大に伴い、3月に予定していた学会出張が中止になったため、旅費の使用額が予定よりも抑えられた。また、人件費・謝金についても植物資源データベース整備に要する費用が予定よりも抑えられたため、残額を次年度に繰り越すこととなった。 3年目は、広域的なアンケート調査を実施する予定であるため、そのための費用(切手代・印刷費・データ入力のための人件費・謝金)を中心として予算執行を行う。また、年度後半には学会発表も予定しており旅費の執行についても計画的に進めていきたい。
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