研究課題/領域番号 |
18K05704
|
研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
小柳 知代 東京学芸大学, 環境教育研究センター, 准教授 (80634261)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 生物文化多様性 / 植物資源利用 / 土地利用 / 里山 / 伝統的知識 / 景観変化 / 迅速測図 |
研究実績の概要 |
本研究では、関東地方における生物多様性と文化多様性の対応関係を定量的に評価し、ランドスケープ構造の異なる地域ごとに生物文化多様性保全の鍵となる土地利用形態や文化的営みを明らかにすることを目的としている。2年目までに伝統的な土地利用形態が異なる地域間での植物資源利用の差異を評価し(A)植物資源利用の多様性を特徴づける土地利用形態の解明を行った。3年目には、地域ごとの植物資源利用の消失実態を把握することで(B)生物文化多様性保全の鍵となる土地利用形態および文化的営みを明らかにすることを目的として2種類の調査を行った。1つ目は、地域の神社を主体として行われる祭典や年中行事に着目し、そこでの神饌等を通じた植物資源利用の特徴とその変化を調査した。(A)で区分した複数のランドスケープタイプ(明治時代の土地利用と地形条件から分類)が含まれ、幅広い都市化傾度をもつ千葉県を対象として、県内全ての本務神社における神饌の種類や入手源とその変化に関するアンケート調査を行った(有効回答率26%)。境内の樹林地から供給されるヒサカキやマサキ以外に、一部の地域では今でもススキやフジ等の野生植物資源が地域の生態系から供給されていることが分かったものの、想定していたランドスケープタイプ間での利用状況の差異を確認することはできなかった。2つ目は、地域の小学校の児童とその保護者を対象として植物資源利用に対する知識や経験の保有状況に関するアンケートを実施した。既に関係性が構築できていた1地域で試行的に実施した結果、植物資源(約60種)について種ごとの知識や経験の保有状況の世代間差を定量的に明らかにすることができた。この手法をランドスケープタイプが異なる複数の地域へ適用することで、地域ごとの伝統知の消失実態とその差異を明らかにすることができると考えた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ランドスケープタイプごとの植物資源利用の多様性と土地利用形態との対応関係の解明(A)については、当初予定していた通り2年間でデータ整備および解析を進めることができた。一方で、植物資源利用の消失実態把握(B)に関して、新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け、対面でのインタビュー調査が困難になったため、調査手法を変更する必要性が生じた。前述の通り、インタビュー調査に代わって複数の調査を実施しその有効性を検討した結果、小学校の児童とその保護者を対象としたアンケート調査の有効性が確認されたため、研究期間を1年延長し、ランドスケープタイプが異なる複数の地域で同様の調査を実施することで最終的な目的を達成することができると考えた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、伝統的なランドスケープ構造が異なる地域ごとに植物資源利用の消失実態把握(B)のためのアンケート調査を中心に行う予定である。代表的なランドスケープタイプごとに複数地域を抽出して、当該地域に位置する小学校にアンケート調査への協力を依頼する。調査を依頼する学校にできるだけ負担が生じないよう、調査の時期や方法について事前に十分に相談した上で実施する。また、アンケート調査と同時に、引き続き、植物資源の入手元生態系の量的・質的な変化について分析を進め、植物資源利用の消失実態との対応付けを行っていきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大に伴い、農山村地域への出張を見送ることになった。また、学会発表についてもオンライン開催となったため旅費の使用額が予定よりも大幅に抑えられた。また、人件費・謝金についても調査方法を再検討した結果、当初予定していたデータ入力等の作業が生じなかったため予定よりも抑えられた。これらの予算を新たに追加したアンケート調査の実施および解析のための費用に充てるために、研究期間を延長し、次年度に繰り越すこととした。4年目は、アンケート調査を中心に実施する予定であるため、そのための費用(調査依頼時の旅費、切手代・印刷費・データ入力のための人件費・謝金)を中心として予算執行を行う。また、年度後半には学会発表も予定しており、現地開催された場合には旅費として執行することも予定している。
|