研究課題/領域番号 |
18K05705
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
奥 敬一 富山大学, 学術研究部芸術文化学系, 准教授 (60353629)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 文化的景観 / 視点場 / 本質的価値 |
研究実績の概要 |
視覚化装置分析のケーススタディ:2020年度に新規に重要文化的景観に選定された「加賀海岸地域の海岸砂防林及び集落の文化的景観(石川県加賀市)」について、視覚化装置の特徴を分析した。当該文化的景観の構造を体験できる代表的な視点場として、加賀海岸地域の地形的景観を俯瞰する「眺望景観」と、 身近な建造物等をアイレベルで視認する「生活景観」に区分して設定していた。景観単位ごとにこれらの視点場が配置され、本質的価値を理解するための主要な景観が網羅されていた。こうした視点場が用意されている一方で、メディアなどで使用される代表的な景観としては、地表上の視線位置ではなく、ドローンなどによる空撮による鳥瞰的画像が使用されている。当該地域の景観構造は、地表上の視点場での代表が難しく、鳥瞰型で代表されるタイプである。 文化的価値の視覚的評価のケーススタディ:越前オウレン栽培地の文化的価値について明らかにし、文化的景観としてのポテンシャルを示すとともに視覚的評価をおこなった。「文化的景観」の定義と照らし合わせ、「越前オウレンの栽培技術」は非常によくその定義に当てはまることを示した。①白山麓の出作りの生活様式と密接に関連し、現在も社会に有益な産品を供給している。②白山麓の高標高地という環境条件に適応した生活・生業によって形成されたものである。③白山麓の生業複合のなかでも、ほかの地域には残されていない生業を継承している。また視覚的評価としては、オウレン畑は上層木が適度に疎開し、また下層木があまりない状態のため、明るく見通しもよく、美しい林内景観を形成する。林床には様々な山野草も生育している。またオウレン畑はトチノキなど上層木の下に拓かれる場合もあり、これら上層木が副産物を生み出す重層的な利用もなされてきた。人為的な管理が作り出す山野草の生息環境や上層樹木との重層利用などにより、独特な景観が成立していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍により必要なフィールド調査を行うことができなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はコロナ禍により必要なフィールド調査を行うことができなかった。次年度も大きく状況が変わるとは考えにくいため、フィールド調査に代替する調査を検討する必要がある。具体的には、当該市町村の担当部局へのアンケート調査にかえるなどの方法を検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍によりフィールド調査のための出張をおこなうことができなかったため。また、そのためデータがそろわずデータ整理等の物品、謝金等を使用することができなかったため。 使用計画:関係自治体へのアンケートの作成・発送、アンケートデータの整理・入力補助者への謝金、研究成果公開のための編集委託業務および投稿料等
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