本研究は都市固有の景観を形成している要素として、城下町に残る水路網、池がある庭園、緑の景観に焦点を当て、その地域固有の景観の保全状態の課題を調査して整理し、その名残りや記憶の残し方がどうなされているのか、調査研究していくものである。 今年度は、訪問者に対して城下町の歴史を案内する説明板の配置と内容の調査を行った。江戸時代から続く水路網と取水している庭園群がどのように説明されているのか、町行く人々にアピールしているのか、把握するためである。 長野市松代町では、松代城から新御殿、さらに伝統環境保存区域である4町にかけて調査した。説明板は44カ所に設置されていた。松代町の特徴として、設置された場所の武家屋敷出身の人物の説明板が多い。それ以外に、町名の説明や道に面した門の説明があった。水路網の説明は2カ所あり、無料で公開されている山寺常山邸と公園の中にあった。庭園の説明は3カ所にあり、いずれも屋敷内であった。いずれも道行く人々には見えない。 群馬県甘楽郡甘楽町小幡の城下町では、「小幡の“水”を巡る」コース上で調査した。45カ所に設置されていた。水路網の説明板は3カ所、雄川堰からの取水口の説明板も3カ所それぞれにあった。庭園の簡単な説明は公開されている松浦氏屋敷の入口にあり、庭園内にはより詳しい説明と残されている庭園群の説明があった。 このように、福岡県朝倉市秋月、柳川市、長崎県島原市、雲仙市国見町神代、石川県金沢市を調査した。水路網や庭園(群)の説明がある町と存在しない町があり、その町の水路網や庭園群への関心の程度により、差があることが伺えた。これらの調査結果は、令和4年度6月に開催される日本庭園学会全国大会で発表する。
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