2020年度については、(イ)日本統治時代における台湾の民間造園技術者・清水半平の造園活動の具体的内容の把握、(ロ)日本統治時代の台湾における花卉園芸の発達と横浜植木との関係の把握、(ハ)これまでの研究の体系的整理と報告書の作成、の3点を実施した。 (イ)については、台湾の花蓮で日本統治時代に清水種苗園を営んだ清水半平(1890~1981)について、渡部泰輔編『全国著名園芸家総覧(第14版)』(1938)、台湾総督府職員録系統、清水半平のご子孫の方へのヒアリング調査と清水半平が残した史資料の分析等をもとに、台湾への渡航経緯と造園・種苗業の創業の経緯、清水種苗園のスタッフや業務組織の概要、養成栽培された造園樹木や観賞植物の詳細、手掛けた造園空間を解明した。 (ロ)については、国立台湾図書館に所蔵される日本統治時代の造園・園芸雑誌「熱帯園芸」のすべてを文献調査し、日本人住宅の庭園に利用された花卉園芸植物が横浜植木によってどのような経緯によって導入されたのかを解明するとともに、台湾総督府技師・田代安定が重要な役割を担っていたことを解明した。 (ハ)については、2018年度、2019年度、2020年度で実施した研究成果を1冊の報告書として体系的に整理した。内容としては、日本統治時代の台湾における日本庭園の概要、官邸・官舎、日本人住宅等の保存状況、台北における日本人住宅・宿舎の庭園の配置と構成、日本人造園技術者とその営業内容の全体像、台湾総督府技師・尾辻国吉旧邸庭園の保存修復のための方法と課題などについてとりまとめた。
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