研究課題/領域番号 |
18K05734
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
高橋 由紀子 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (60725266)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | スギ花粉症 / スギ花粉飛散防止剤 / 遺伝的多様性 / 遺伝的構造 / マイクロサテライト / スギ黒点病菌 / Sydowia japonica / 分子生態 |
研究実績の概要 |
本研究では、日本国内におけるスギ黒点病菌の遺伝的構造を明らかにするとともに、国内に自生するスギの遺伝的構造との関係を明らかにする。そのために、天然林を中心とする日本国内のスギ林から本菌を採取し、DNAマーカーにより得られた菌株の遺伝子型を同定し、日本国内の個体群の遺伝的構造を明らかにする。そして、既に情報が蓄積されているスギ天然林の遺伝的構造(Kimura et al. 2014)と照らしあわせ、両者の分化パターンを比較することで、両者の相互関係を明らかにする。 本年度は、新潟県佐渡市新潟大学農学部附属フィールド科学教育研究センター佐渡ステーション演習林、ドンデン山、静岡県浜松市天竜、島根県隠岐の島町隠岐自然回帰の森、岩倉の乳房杉、津和野町安蔵寺山、富山県立山町美女平、熊本県五木村高塚山、菊池市菊池渓谷、鹿児島県屋久島町宮之浦の10地点においてスギ黒点病菌の発生調査と罹病枝のサンプリングを行った。京都府芦生の1地点については、研究協力者の協力により罹病枝を入手した。各枝から採取した罹病雄花を組織分離し、出現した菌叢からスギ黒点病菌を選抜して菌株を確立した。芦生の試料は菌株を得ることはできなかった。確立した菌株は順次振とう培養し、DNAを抽出した。一方、サンプリング地点数を増やすために、過去に確立された菌株を整理し、供試菌株数を拡充した。これに伴い、当初予定していたマイクロサテライトマーカーによる解析を見直し、菌株数が十分数に満たない場合の解析方法を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
スギ黒点病菌の発生調査と菌株の収集は予定通り進捗している。さらに、過去に収集されたスギ黒点病菌株を整理し、試料菌株数と地点数と拡充した。これに伴い、解析手法を再検討したため、当初予定していたDNAマーカー作出はやや遅れているが、全体的には地点数と精度の向上が見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
前年に引き続き国内のスギ林においてスギ黒点病菌の発生調査と罹病枝のサンプリングを行う。得られた罹病枝から菌を分離し、スギ黒点病菌の菌株を得ると共に、得られた菌株からDNAを抽出し、特異的プライマーを用いてスギ黒点病菌株を選抜する。前年までに得られた菌株並びに過去に採集された菌株についても同様に行う。並行して、スギ黒点病菌のドラフトゲノムシーケンスを行い、得られた配列を元にDNAマーカーを作成する。作成したマーカーを用いて、各調査地から得られた菌体DNAを鋳型としてPCR増幅し、遺伝子型を同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では、初年度にマイクロサテライトマーカーの作成を予定していたが、全調査地点からまんべんなく必要数の菌株を取得することが困難であることから、解析方法の見直しを行った。少数の菌株でも遺伝的構造解析が可能な方法の再検討を行ったため、初年度に予定していたde novoシーケンス解析の実施を見送り、次年度以降に実施することとした。 次年度は、スギ黒点病菌のドラフトゲノムシーケンスを取得し、マイクロサテライトマーカーおよびSNPsマーカーを作成する。並行して、引き続きスギ黒点病菌の菌株を収集する。収集した菌株の一部を用いて、作成したDNAマーカーの性能の確認を行う。
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