研究課題/領域番号 |
18K05735
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
北島 博 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (70353662)
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研究分担者 |
近藤 洋史 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (10353690)
齊藤 正一 山形県森林研究研修センター, 森林生態保全部, 主幹 (80502583)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | カシノナガキクイムシ / ナラ枯れ / 高標高寒冷地 / 耐寒性 |
研究実績の概要 |
山形県のナラ枯れ被害丸太を森林総合研究所(茨城県)に運搬し、野外網室内に直射日光が当たらないようにして収めた。その後、9、11、12、1、2および3月に割材して幼虫を取り出し、過冷却点を測定した。その結果、過冷却点の平均値は、9月には-12.9℃であったものが、1月には-16.6℃となり、冬季に過冷却点を低下させたことが示された。このため、カシノナガキクイムシは冬季には耐寒性を増していると考えられ、過冷却点はその指標になると考えられた。一方、2月には-8.5℃へ上昇した。当該年のつくば市(館野)の平均気温は、9月が21.7℃、1月が2.4℃、2月が3.5℃であった。低温が続く2月に過冷却点が上昇した原因は明らかではないが、丸太の乾燥が進み昼間の比較的高い温度の影響を受けやすくなったこと、網室の床がコンクリートであったためそこへの日射の影響を受けやすかったことなどが考えられた。今後、丸太の保管状況等を考慮して、過冷却点の測定を行う必要があると考えられた。 山形県森林研究研修センター試験林内のナラ林で平成30年10月18日に伐採してセンターの試験林内に保管した丸太を,10月26日に以下の試験地に設置した。ア.低標高145m山形県森林研究研修センター敷地内、イ.中標高下部420m山形県森林研究研修センター試験林内、ウ.中標高上部820m自然博物園周辺、エ.高標高1,100mリフト駐車場付近国有林内。早春、成虫が脱出する前に丸太を改修して、材内の個体の生死を調査する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はカシノナガキクイムシの耐寒性の指標として過冷却点が有用であること、実際の高標高寒冷地での生死を確認するための試験設定を行うことが目標であった。カシノナガキクイムシの過冷却点は冬季に低下したことから、過冷却点が耐寒性の指標となると考えられた。これにより、次年度に複数の地域におけるカシノナガキクイムシの耐寒性の評価を過冷却点を用いて行うことができるようになった。また、実際の高標高寒冷地でのカシノナガキクイムシの生死を調べるため、山形県内各地での試験設定が完了した。これらのことから、計画通りに進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
東北地方を中心に複数地域でのカシノナガキクイムシの過冷却点を測定し、地域変異の有無等を検討する。山形県内各地に設置したナラ枯れ丸太を割材してカシノナガキクイムシの生死を調べ、温度との関係を解析する。北海道等、寒冷ナラ林での被害予測を行うために、現地踏査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ナラ枯れ被害材の収集において、被害地の協力により予定していた出張や伐倒委託などの経費が不要となったこと、寒冷地ナラ林の現地踏査が計画以上に進み、出張回数を減らせたことにより次年度使用額が生じた。次年度はカシノナガキクイムシ過冷却点の地理的変異を明らかにするために、より多くのナラ枯れ被害地を視察して被害材を収集する。さらに、北海道での被害拡大予測をするために北海道の寒冷ナラ林の視察を精力的に行う。これらのために使用する計画である。
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