研究課題/領域番号 |
18K05738
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
関本 均 宇都宮大学, 農学部, 教授 (10261819)
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研究分担者 |
大久保 達弘 宇都宮大学, 農学部, 教授 (10176844)
飯塚 和也 宇都宮大学, 農学部, 教授 (20344898)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 放射性セシウム / 窒素 / 硝酸化成 / カリウム / スギ苗 |
研究実績の概要 |
(1)NO3-とNH4+がスギ苗の137Cs吸収に与える影響 赤玉土と福島県川俣町のコナラ・ミズナラ林腐葉土(137Cs, 2032 Bq相当)を入れたポットに、スギのコンテナ苗を定植し、NO3-とNH4+を含む水耕液を与えて20週間栽培した。当年枝葉・枝葉・茎の137Cs濃度はNH4+で明らかに低くなり、KのみならずNH4+によっても137Cs吸収は抑制された。土壌の硝化(NH4+からNO3-への変化)の進行に伴い、NH4+の137Cs吸収の抑制効果が低下することが予想された。 (2)スギ苗に含まれる137Csの根への転流とKの影響 さし木で発根させて、スギ茎葉の137Csの根への転流について検討した。さし穂に対する不定根の137Cs放射能比は1.05で、移行率は18.8%であった。さし穂の137Csは、新しく形成された不定根へ移行し、137Cs濃度はスギ苗全体で均一化された。一方、KCl水溶液でさし木した場合、さし穂に対する不定根の137Cs放射能比および移行率は有意に低くなり、それぞれ0.70および12.3%であった。137Csの根への転流はKによって抑制される可能性があった。この研究成果は、第130回日本森林学会大会で発表した。 (3)苗木のK栄養が137Cs吸収に及ぼす影響 スギとコナラの苗を水またはKCl水溶液(6 mmol/L)に30日間、苗の根部を浸漬させて、那須塩原市金沢のスギ更新林地(18500 Bq/kg(soil))に定植した。K溶液の浸漬によって、明らかに137Cs吸収は抑制された。Kの経根吸収のみならず、植物体のK濃度を上げれば137Cs吸収抑制効果が発揮されることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地試料を用いたポット試験と現地圃場試験であったが、データの変動も少なく、予定通りの知見が得られた。また、スギ苗のさし木にも成功した。
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今後の研究の推進方策 |
31年度は、30年度に得られた知見(NO3-とNH4+がスギ苗の137Cs吸収に与える影響、苗木のK栄養が137Cs吸収に及ぼす影響)を137Csを用いたRI実験で検証する。また、31年度中にRIイメージングによる見える化を計画しているが、その派生的な研究課題として、シイタケ菌糸における137Csの動態の可視化を試みる。放射能汚染地域におけるシイタケ原木の利用再開・再生、およびキノコへの放射性Csの集積^メカニズムの解明とそれによる安全なキノコの出荷に向けた取り組みが喫緊の課題であるからである。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年9月に開催される、国際森林研究機関連合国際研究集会(ブラジル、クリチーバ)で成果を発表する予定であり、その旅費を勘案したため。
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