研究課題/領域番号 |
18K05740
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
渋谷 園実 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任研究員 (50598232)
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研究分担者 |
福田 健二 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (30208954)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 飛翔形質 / 繁殖型 / 食性 / 解剖 / 生活史戦略 / 系統解析 |
研究実績の概要 |
環境指標生物として期待され、環境省がモニタリングしている地表徘徊性甲虫類(コウチュウ目オサムシ科)の生態を解明するために以下を中心に行った。 1. 解剖:地表徘徊性甲虫類の生活史戦略を類型化するために、昨年度に引き続き、解剖を継続して行い、現在までに9亜科51種の生態を以下の点において明らかにした。 ①飛翔形質については、後翅の形態及び後翅長の測定、飛翔筋の有無の確認を行い、様々な知見を蓄積した。中でも、里山の環境指標生物として期待できるアトボシアオゴミムシChlaenius naevigerの後翅に関しては、翅の先端部に短縮が見られた翅端短縮型と、径脈の先端部から翅端までが長い翅端正常型のものがあった。翅端短縮型と正常型について、後翅長を比較すると、短縮型が有意に短かったが、他のオサムシ科の翅二型のように両者の翅長に大きな差(非連続性)はなく、バッタの相変異に見られるような翅長の連続性が見られた。環境によって後翅の翅端を変化させることで、生息地の環境変化に敏感に反応している可能性が示唆された。②繁殖戦略については、51種の生殖器官から各種の繁殖時期を調べた。また雌の蔵卵数と卵の大きさから卵タイプを分類し、さらに雌の交尾器の動きと形状から産卵様式の推定を試みた、③食性については、消化管内容物の確認により把握した。 2. 調査:本研究では、上記①の飛翔形質の進化(退化)過程を明らかにするため、遺伝子解析を行っているが、併せて、実際に飛翔が確認されている種について、その個体群の飛翔時期を調べるために野外調査を行った。 3. 飼育:②の繁殖戦略に関して、実際の産卵様式を把握するため、上記で捕獲した個体のうち、春繁殖と秋繁殖の合計6種38個体の飼育を昨年6月以降開始したが、産卵が確認できなかった。よって、生存個体については、現在も継続飼育・確認中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
解剖による各種の生活史特性に関しては、飛翔形質、繁殖型、食性の解明についていずれもおおむね順調に推移している。遺伝子解析に関しては、当初考えていたプライマー対により対象領域の増幅産物が得られない種があったため、プライマー対の再検討が必要となった。そのため、進捗がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子解析については、広範囲な分類群で増幅することが確認されているプライマー対が複数あるため、それらの中から本研究の対象種に適したものを選抜して解析に用いる予定である。解剖については、昨年度までで完了した9亜科51種のうち、さらなる調査が必要であると選定した種について、解剖個体数を増やしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:解剖による各種の生活史特性に関しては、予定通り実施することができたが、遺伝子解析において、対象領域を増幅させるプライマー対の再検討が必要となった。それにともない、当初予定していた遺伝子解析のための試薬・消耗品の購入やシーケンスの外注を取り止めたため、次年度使用額が生じた。 使用計画:新たなプライマー対の候補は既に決まっており、予備実験を経て、対象個体の遺伝子解析を行う。既に調査対象個体のDNA抽出を終えていることから、次年度中に解析できると考えている。
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