山地域に豪雨があると、これまでの流出モデルでは予測が難しい、鉄砲水や土石流と呼ばれる極端に大きな水位上昇やそれにともなう土砂流出が生じるが、この極端洪水は、観測が困難で実態把握や現象解明が進んでいない。そのため現状では、たとえ豪雨予測ができたとしても、いつどれほど河川の水位や流量が増加するのか予測できない状況がある。 本研究では,現地観測により、豪雨時の山地河川での極端な洪水現象の実態を把握し、実態に基づいて豪雨時の水位や流量の予測精度向上をめざす。 今年度は起伏が大きく、付加体堆積岩からなる東京大学秩父山地での観測データ整理と分析を中心に行った。流域面積0.5km2のバケモノ沢流域、バケモノ沢を含む94km2の川又流域における降雨-流出データ、バケモノ沢の地温や河川水温観測、水安定同位体比やSiO2濃度の観測結果を解析した。その結果、バケモノ沢では年間1000㎜弱、降雨のおよそ50%が漏れていた。基岩深くにしみ込み、バケモノ沢量水堰堤地点で流出してこない水は下流の川又流域でほとんど流出することがわかってきた。さらに、バケモノ沢では平水時も洪水時も基岩からの水が河川水の主要な起源であることが明らかとなった。さらに、大雨時には基岩のさらに深いところからの水の寄与が増加することがわかった。対象流域では、流出に寄与する地中の範囲が思いのほか深く、また寄与する深さは流域の乾湿条件によって大きく変化し、より深いところからの水の寄与が増加し始めると河川水量が急激に増加することがわかった。
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