(1)鳥類の移動パターンの解明:林分境界における鳥類の林分間の移動に対する影響要因を解析し、鳥類は林冠高の差に強く影響されること、さらに、林相と鳥類の生息地利用タイプによって移動パターンが変わることを明らかにした。広葉樹林から針葉樹人工林への鳥類の移動確率を分析した。さらに、鳥類の生息地選択には林分構造(階層性)も影響していることを明らかにした。 (2)種子の体内滞留パターンの解明:主要鳥類の種子排泄にかかる時間(種子の体内滞留時間)を計測することができた。計測データを解析し、鳥種および種子サイズによって体内滞留時間が異なることを明らかにした。例えばメジロについて、アカメガシワとヒサカキの果実で実験を行った。種子サイズはアカメガシワがヒサカキの倍以上大きいが体内滞留時間はアカメガシワが20分、ヒサカキが28~30分という結果が得られ、大きな違いはみられないことが分かった。ジョウビタキについて、アカメガシワ1種のみで実験を行った。体内滞留時間は9.6分であった。メジロと比較してジョウビタキのほうが体サイズが1.5倍大きいためか、鳥種間で大きな違いがあることが分かった。 (3)プロセスモデルの構築:モデリング結果から、散布種子の空間分布は林縁からの距離に依存した減少を示さず、方向性があり、さらに集中的分布を示すことを明らかにした。 (4)種子散布予測:鳥類の移動パターンおよび種子の体内滞留時間に基づき、主要鳥類による種子の散布距離について推定頻度分布を明らかにした。 (5)上記により、鳥類による種子散布は種子供給源からの距離に大きく制限を受けるものの、林分構造等の違いによる鳥類の生息地選択は鳥類の個体数に大きく影響を与えるため、種子供給源からの距離が同程度であった場合、鳥類が選好する林分に指向的に種子が散布され、それは特に体内滞留時間の長い小型種子で見られると考えることができた。
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