研究課題/領域番号 |
18K05751
|
研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
松山 周平 酪農学園大学, 農食環境学群, 准教授 (30570048)
|
研究分担者 |
鈴木 透 酪農学園大学, 農食環境学群, 准教授 (20515861)
佐藤 喜和 酪農学園大学, 農食環境学群, 教授 (60366622)
森 さやか 酪農学園大学, 農食環境学群, 准教授 (70623867)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 種子散布距離 / ヒグマ / ヤマブドウ / サルナシ |
研究実績の概要 |
1. 実質的な種子散布距離(定着した実生と母個体間の距離)の推定:ヒグマの生息していない奥尻島と利尻島、ヒグマの生息地である浦幌町において道沿いを20-40kmにわたりヤマブドウを探索し、各地150個体以上について葉の採取と位置情報・開花の有無と性別の記録を行なった。奥尻島、利尻島、浦幌町の葉サンプルの一部(奥尻174個体、利尻島489個体、浦幌町192個体)からDNAを抽出し、5つのSSR遺伝子座の遺伝子型を調べた。SSRデータをもとにベイズ理論による親子解析を行なったところ、採取した雌個体を母樹とする若齢個体を検出されなかった。これは採取できた雌個体の数が少なかったこと、遺伝子型を決定できなかった遺伝子座を含む個体が多かったことが一因だと考えられた。SSRデータをもとに近交係数(Kinship, Loiselle et al. 1995)を算出し、位置情報をもとに空間遺伝構造を比較したところ、浦幌町でのみ5-10km離れた個体間で有意な正の近交係数を示した。これはヒグマの生息していない地域とヒグマの生息している地域との間で実質的な種子散布距離には差があるという予測を否定しない結果であった。
2. 見かけの種子散布距離(定着した実生と母個体間の距離)の推定:浦幌町、利尻島でヒグマおよび中型哺乳類の糞を探索、採取した。浦幌町では新たに36個の糞を採取し、そのうち1つからヤマブドウ、4つからサルナシが検出された。中型哺乳類の糞は15個採取され、そのうち7つからサルナシが検出された。利尻島では中型哺乳類の糞12個を採取したが、糞の中にはヤマブドウは含まれていなかった。利尻島の中型哺乳類の糞はノネコまたはイタチのものと見られ、これらは利尻島では中型哺乳類がヤマブドウの種子散布を担っていないことを示唆した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1. 実質的な種子散布距離の推定:実質的な種子散布距離の推定では、サンプル採取は概ね順調に進んでいるが、遺伝子型分析の結果が期待に反しており、やや遅れている。利尻島、奥尻島、浦幌町でヤマブドウのサンプルを多数(合計1720個体)採取し、そのうち847個体について5つのSSR遺伝子座の遺伝子型を決定した。しかし、親子と推定される個体のペアは検出されず、実質的な種子散布距離を得られなかった。雌個体のサンプルを追加することと、一部のサンプルについて遺伝子型の再分析が必要である。 ヒグマの生息している天塩町でヤマブドウのサンプル採取を予定していたが、2018年度には実施できなかった。2019年度にサルナシのサンプル採取と合わせて行う必要がある。 2.見かけの種子散布距離の推定:見かけの種子散布距離推定のためのサンプル採取は概ね順調に進んでいる。浦幌町、利尻島でヒグマ、中型動物の糞を採取することができ、そのうちいくつかからヤマブドウ、サルナシが検出された。2019年度には奥尻島、天塩町でも実施する。鳥類の糞の採取は2019年度以降に実施する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
1. 実質的な種子散布距離の推定:ヤマブドウについては、2018年度実施できなかった天塩町での葉サンプル採取を行うとともに、利尻島、奥尻島、浦幌町でも雌個体のサンプルを追加する。また、解析に用いるSSR遺伝子座を6-8座増やし、親子の検出感度を高める。これにより、親子関係のある個体を検出する。サルナシの葉サンプルの採取を利尻島、奥尻島、天塩町、浦幌町で行う。SSR遺伝子型決定のためのマーカーを選定し、遺伝子型決定を行う。 2.見かけの種子散布距離の推定:各調査地でヒグマ、中型哺乳類、鳥類の糞の採取を行う。すでに採取・保存されている浦幌町の過去のヒグマの糞、ならびに、2018年度に採取した糞に含まれていたヤマブドウ、サルナシからDNAを抽出し、SSR遺伝子型を決定する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2018年度は、天塩町でのサンプル採取を開始できなかったことに加え、利尻島、奥尻島、浦幌町でサルナシのサンプル採取を開始しなかったため、旅費と人件費の支出が減り、使用総額が予定よりも772,326円少なくなった。2019年度にはこれらサンプル採取と分析を行うため、残額は次年度予算と合わせて使用する。
|