(最終年度の成果概要)伐採履歴の違いが森林の地上部と細根現存量の回復に及ぼす影響を明らかにするため、樹木動態の再調査を実施した。その結果、伐採からの回復段階は伐採履歴の異なる2つの択伐林で異なることが示された。2つの択伐林(旧択伐林と新択伐林)および原生林において直径成長速度を比較したところ、新択伐林の直径成長速度は他と比べて有意に高かった。先駆樹種のMacaranga 属に着目すると、新択伐林では最近定着した成長速度の高い若い個体で構成されていたが、旧択伐林ではサイズが大きく成長速度の低い個体で占められていた。また、Macarangaの死亡率は、幹直径15cm未満の小径木に着目すると、新択伐林よりも旧択伐林の方が高かった。旧伐採林ではMacarangaの小径木個体が少なく死亡率が高かったことから、更新が進んでいない可能性が考えられた。 (期間全体の成果概要)ボルネオ島の低地熱帯林において伐採履歴の違いが森林地上部と直径2mm未満の細根現存量の回復に及ぼす影響を明らかにするため、伐採履歴の異なる2つの択伐林および原生林の地上部と細根の現存量、樹木動態を比較した。その結果、2つの択伐林は森林の回復段階が異なることが示された。調査地はマレーシア、サバ州のマリアウベイスン森林保護区で、2015年と2005年に択伐された新・旧択伐林および原生林を対象とした。地上部現存量は、原生林>旧択伐林>新択伐林の順に高かった。旧択伐林は新択伐林と比べて原生林に近い細根現存量を有していた。新択伐林では最近侵入・定着したMacaranga属が旺盛な成長を示したが、旧択伐林の直径成長速度は原生林と同定度に低かった。地上部と細根の現存量の点から旧択伐林は新択伐林と比べて回復が進んでいるものの個体の成長速度が低いことから、今後の回復は緩やかになると予想された。
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