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2019 年度 実施状況報告書

低温プラズマによるリグノセルロースのガス化とその応用

研究課題

研究課題/領域番号 18K05762
研究機関京都大学

研究代表者

南 英治  京都大学, エネルギー科学研究科, 助教 (00649204)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードバイオマス / セルロース / ヘミセルロース / リグニン / 低温プラズマ
研究実績の概要

セルロース試料として濾紙及び微結晶セルロース、ヘミセルロース試料としてブナキシラン及びコンニャクグルコマンナン、リグニン試料としてスギ及びブナ由来の摩砕リグニン及びクラーソンリグニンと、さらに試料を増やし、グロー放電プラズマ処理による分解速度を検討した。擬一次反応を仮定したときの分解速度定数には明確な傾向が見られなかった。一方、表面反応モデルによる分解速度定数(≒比表面積当たりの一次分解速度定数)を評価すると、概ねセルロース試料、ヘミセルロース試料、リグニン試料はそれぞれ同等の分解速度定数を示し、ヘミセルロース>セルロース>リグニンの順に分解速度定数が大きいことが明らかになった。
これらの試料はいずれもチャーやタールを生成せず、全て分解してガス化したが、四重極型質量分析計による分析では生成ガス組成の差を明確にすることができなかった。これは、分解速度が遅く、生成ガスが多量の雰囲気ガスに希釈され、十分に再現性のあるデータが得られなかったためである。
一方、ゾルゲル法によってスギ薄片の細胞壁中に酸化チタンを担持した無機複合化木材を調製し、これをグロー放電プラズマ処理した。その結果、ほぼ酸化チタンのみを残し、木材細胞壁を分解・ガス化して除去することができた。得られた試料をSEM観察した結果、元の細胞壁の形状を維持した酸化チタンが得られたことが確認された。同様に、細胞壁の内腔に酸化チタンを形成し、グロー放電プラズマ処理で木質部を除去したところ、内腔の形状を保った柱状の酸化チタンが得られた。この酸化チタンの表面には、壁孔の形状が鋳型のようにそのまま残っていた。なお、複合化木材を酸素存在下、500~600℃で数時間熱処理しても木質部を除去できるが、この場合は木質部の一部が炭を経由(凝縮する)して除去されるため、細胞壁の形状は残らなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の計画通り、無機質複合化木材から木質部のみを除去し、細胞壁の形状をもつ無機材料を調製することができた。

今後の研究の推進方策

セルロース、ヘミセルロース、リグニンの各単離試料の分解速度を表面反応モデルにより比較し、その差を明らかにすることができた。ただし、現実にはグロー放電プラズマにより生成されるラジカルの量や試料の細孔分布も分解速度に影響を与えると考えられる。そこで、ボールミル等で試料を処理することにより、比表面積の異なる同一試料を調製し、その分解速度を比較することにより、上記の点を明らかにしていく。
一方、生成ガスの分析については、分析感度や信頼性を向上させるため、大気からのリークを軽減するためのグロー放電プラズマ処理装置の改修を予定している。

次年度使用額が生じた理由

コロナウイルスの影響により、第70回日本木材学会の現地開催が中止(予稿集は発行され大会は成立)となったため予定していた旅費が残った。また、今年度に想定していたグロー放電プラズマ処理装置の改修(生成ガス分析の信頼性向上のため)について、想定よりも費用が高く、また納期がかかることがわかったため2020年度には見送り、ガス分析を行わない無機質複合木材のグロー放電プラズマ処理の研究に注力した。以上による残額は、2021年度においてプラズマ処理装置の改修に宛てる計画である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2020 2019

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] グロー放電プラズマ処理による木質バイオマスの分解と 細胞壁構造を有する無機材料調製への応用2020

    • 著者名/発表者名
      中村文香、南英治、河本晴雄
    • 学会等名
      第70回日本木材学会大会
  • [学会発表] 低温プラズマ処理によるリグノセルロースのガス化挙動2019

    • 著者名/発表者名
      中村文香、南英治、河本晴雄
    • 学会等名
      セルロース学会第 26 回年次大会

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公開日: 2021-01-27  

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