前年度までの研究で,マイタケのアルビノ変異の原因遺伝子がtyr2の一遺伝子であることを突き止めた.本年度は,そのtyr2の変異型遺伝子を検出する為のプライマーWtyr2F及びWtyr2Rと野生型遺伝子を検出する為のプライマーBtyr2F 及び Btyr2Rを設計し,PCR法を用いて,多くの担子胞子分離菌株から,迅速に変異型のチロシナーゼ2遺伝子を持つ株のみを選抜する方法を開発した.このことにより,白マイタケ有用菌株育種の飛躍的なスピードアップが期待できるようになった. 次に,マイタケの交配育種を行うにあたり,これまで,全く報告のなかったマイタケの交配システムについて調査した,まず、マイタケ二核菌株の子実体から分離した担子胞子分離株12株の交配和合性グループを検定するため、それぞれを総当たりで交配した後,クランプ結合の有無を光学顕微鏡により観察した。その結果,12株の単胞子分離株は,7株と5株の二つの交配和合性グループに分けることができたことから,マイタケは二極性であることが明らかとなった。 最後に,変異型のチロシナーゼ2遺伝子と掛け合わせるための原木栽培に適した有用な菌株の選抜を行った.鳥取大学農学部附属菌類きのこ遺伝資源研究センター保有の菌株を使って,実際に,原木に植え付けて,その増殖や木材組織への侵入能力を目視で調査した.その結果,鳥取大学農学部附属菌類きのこ遺伝資源研究センター保有の菌株の中に,有用であろうと思われる菌株5株を選抜することができた.今後は,これらの有用菌株の子実体を発生させ,担子胞子分離菌株を取得すると共に,変異型のチロシナーゼ2遺伝子を持つ株と交配し,有用菌株を選抜していこうと考えている.
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