研究課題/領域番号 |
18K05764
|
研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
霜村 典宏 鳥取大学, 農学部, 教授 (00250093)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 外生菌根菌 / ショウロ / ヘルパー細菌 |
研究実績の概要 |
クロマツと共生するきのこ(ショウロ)子実体から,ショウロ菌糸生育を促進するヘルパー細菌を偶然見出した.本年度は,多数のヘルパー細菌を分離し,ヘルパー細菌系統の拡充を目指した.次いで,多様なきのこ(外生菌根菌)とヘルパー細菌との特異性解析をした. 分離源となるショウロ子実体採取地としては,石川県金沢市および鳥取県鳥取市の2カ所を選定した.収集した41個のショウロ子実体から49菌株の細菌を分離した.分離菌株のショウロ菌糸体の生育に及ぼす効果を調査したところ24菌株で,菌糸生育促進効果が認められた.これらの分離細菌系統について分子生物学的手法を用いて同定中である. 一方,多様なきのこ(外生菌根菌)とヘルパー細菌との特異性解析には,15属36種56菌株の外生菌根菌を用いた.外生菌根菌の菌糸生育に対する分離細菌系統の影響について調査したところ,アミタケとチチアワタケの菌糸生育が促進された.最も菌糸生育が促進されたのはTUFC31988アミタケであった.反対に,最も菌糸生育が抑制されたのはTUFC100861イボラシャタケ,TUFC100672アジアカラマツイグチであった.また,対照区と比較して菌糸生育に影響を及ぼさないきのこ種としたオオキツネタケ,ガンタケ等が認められた.宿主がクロマツ由来の5菌株(ヌメリイグチ属)のきのこでは,菌糸生育が促進される傾向があり,逆に宿主がカラマツ属,五針葉マツのきのこに対して,菌糸生育を抑制する傾向が認められた.以上の結果から,ショウロ子実体から分離したヘルパー細菌はショウロを含め,宿主クロマツと共生している外生菌根菌に対して特異的に生育を促進する作用を有すると思われた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヘルパー細菌系統と外生菌根菌との特異性を明らかにできた点は高く評価できる.しかし, 50菌株系統のヘルパー細菌の分離を目指したが,その目標値をクリアーしていないのでやや遅れていると判定した.
|
今後の研究の推進方策 |
今後は,ヘルパー細菌の追加分離を進めるとともに,外生菌根菌との特異性解析を継続し,それぞれの外生菌根菌に対して親和性の高い細菌系統を提案する.また,ヘルパー細菌系統に突然変異誘発処理をして,ヘルパー機能欠損細菌系統を分離し,解析ツールを確立する.ヘルパー細菌系統の培養ろ液より,ショウロ菌糸の生育促進物質を単離し,化学構造を解明する研究に着手する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
理由:概ね予算を使用したが,12,165円の端数残額が生じた. 使用計画:次年度使用額は物品費として使用予定である.
|