研究課題
ショウロ子実体から様々な細菌を分離し,ショウロ菌糸体生育に及ぼす効果について二員培養検定を用いて調査した.ショウロ子実体から分離した19細菌系統の内,6系統が特異的にショウロ菌糸体生育を促進した.ブラスト検索した結果,これらの細菌は,Paraburkholderia, Caballeronia, Janthinobacterium, Novosphingobium および Rhodobacter属に属すると推定できた.さらに,主要な3細菌系統の超微細構造の特徴を走査型電子顕微鏡観察で明らかにした.次に,分離した細菌系統(GIB024)にUV照射を用いて突然変異を誘発し,変異系統を分離する手法を開発した.本手法を用いて,菌糸生育促進能力欠損系統や強化系統の分離に成功した.一方,菌糸生育促進能力強化系統の中には,ショウロ菌糸生育を2倍近く著しく促進する突然変異細菌系統を複数系統確認できた.しかしながら,本促進能力は5か月間の継代培養中に消失した.今後は,著しい菌糸生育促進能力を永続できる突然変異系統の分離や細菌保存方法の改良が求められる.一方,ショウロ-クロマツ外生菌根共生に及ぼす,3細菌系統の接種効果について調査した.その結果,ショウロ菌接種後に細菌系統GIB029を接種すると,1か月後には39%,2か月後に21%と,時間とともに外生菌根形成率が減少した.しかし,ショウロ菌接種後に細菌系統GIB024またはGIB028を接種すると外生菌根形成率が,1か月目より2か月目に著しく増大した.以上の結果から,クロマツ実生におけるショウロの外生菌根形成に及ぼす細菌接種の効果は用いる細菌系統と接種のタイミングで異なり,ショウロ菌を接種した後に細菌系統GIB024またはGIB028を接種することが有効であると考えられた.
3: やや遅れている
ショウロ菌糸体の生育を特異的に促進する細菌を分離しそれらを同定したこと,細菌の超微細構造の特徴を走査型電子顕微鏡で観察し実体を明確にしたこと,さらには,ショウロ外生菌根形成を促進するのに最適の細菌系統と接種方法を確定したことは予定通りであり,高く評価できる.しかしながら,当初予定していた細菌培養ろ液におけるショウロ菌糸体生育促進物質を解明する研究が十分に進んでいないことから,やや遅れていると判定した.
分離細菌系統の培養ろ液における菌糸生育促進物質を単離同定するため,効率的に培養ろ液を得る方法や簡易かつ迅速検定方法を開発することで検定系を確立する.また,これらの細菌は宿主クロマツと共生する外生菌根菌の生育を特異的に促進する作用を有することを見出しているので,本特異的作用を本細菌培養ろ液由来物質でも確認する.菌糸生育促進能力欠損細菌系統と増強細菌系統を用いて「ヘルパー細菌の役割解析ツール」を確立する.本解析ツールを用いて,子実体,外生菌根および根圏における細菌の局在性,子実体形成や外生菌根形成に及ぼす細菌接種の効果等を検証することで,ヘルパー細菌の生存戦略に関する基礎的知見を集積する.
概ね予算を使用したが,7,566円の端数残額が生じた.次年度使用額は物品費として使用予定である.
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