低分子フラバノール化合物及びタンニンを二酸化窒素に暴露し、NMR、熱分解GC/MS、HPLCにより分析した。その結果、反応生成物由来のピークは検出されず、本実験条件ではタンニンの二酸化窒素除去能は、これまでに報告したB環芳香核のフェノール性水酸基の抗酸化能によるところが大きいと考えられた。 タンニンは蒸煮処理により種々の化学変換が起こることが分かっており、その一つが重合度変化である。タンニンのB環芳香核が二酸化窒素除去能に影響することが明らかになっていることから、B環芳香核がcatecholのprocyanidin型タンニンとcatechol及びpyrogallolのprodelphinidin型タンニンを用いて、重合度と二酸化窒素除去能との関係を検討した。その結果、タンニンの構成単位がprocyanidin型のスギタンニンでは、蒸煮爆砕処理によりタンニンオリゴマー及びポリマーの二酸化窒素除去能は増加した。一方、procyanidin及びprodelphinidin型のヤナギタンニンでは、ポリマーの二酸化窒素除去能は増加したが、オリゴマーは、ほとんど変化しなかった。両樹種において、蒸煮爆砕処理によりポリマーの重量平均分子量は増加する傾向があった。二酸化窒素除去能を増加させる処理温度としては、ポリマーは両樹種共に180℃以上が適しており、スギオリゴマーは200℃が適していた。粗抽出物及び低分子量ポリフェノール画分は、蒸煮爆砕処理による効果はほとんどなく、タンニン以外の除去能が高い化合物が含有している可能性は少ないことが考えられた。以上の結果から、蒸煮爆砕処理はタンニンの二酸化窒素除去能の向上に効果的であること、重合度が影響することが明らかになった。
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