研究課題/領域番号 |
18K05775
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
藤森 康澄 北海道大学, 水産科学研究院, 教授 (40261341)
|
研究分担者 |
山本 潤 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 助教 (10292004)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | トヤマエビ / 噴火湾 / かご漁具 / 小型個体保護 / 活動性 |
研究実績の概要 |
本研究では,噴火湾のトヤマエビPandalus hypsinotusの資源保護を行うとともに,同地域の同種を対象とするかご漁業の持続性を担保するための漁具改良法として,かご漁具の網地の網目拡大,脱出口の装着の2 種類の方法について適切な仕様を決定し,その効果と漁業における実用性を検証することを目的として,1)トヤマエビの行動特性とかごからの脱出行動に関する水槽実験,2)試験かごを用いた効果の評価,を計画している。本年度は,トヤマエビの行動生態とかごからの脱出行動の把握を目的として,1)トヤマエビの行動特性の調査,2)かご漁具の網地の網目サイズ(目合32, 43, 52, 65mm)と脱出効果の関係について,北海道噴火湾内森漁港で水揚げされたトヤマエビを供試個体として北海道大学函館キャンパスの先端環境制御実験棟内に設置された海水循環式飼育水槽を使用して水槽実験を実施した。 1)トヤマエビの行動特性 個体サイズ別では,小型個体の活動量が大型個体より大きいことが明らかとなった。また,大型,小型個体のどちらにも24時間程度の活動の日周性が認められた。特に,小型個体の活動量は夜間において大型個体よりも高くなったことから,夜間に操業されるかご漁具への脱出口等の装着は,小型個体の保護に有効であると考えられた。ただし,他の種で見られるような縄張り行動とそれにともなう個体間の威嚇行動は認められなかった。 2) 網地の網目サイズと脱出効果の関係 実験から求められた網地によるエビの保持率において,現在商業的に使用されている目合32mmでの値は0.99となり,ほとんどの個体がかごから脱出しないことが推測された。なお,網地によるエビの保持率は網目の拡大とともに減少したことから,網目の拡大による小型個体保護は可能であると判断された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,1)トヤマエビの行動特性とかごからの脱出行動に関する水槽実験,2)試験かごを用いた効果の評価,を計画の骨子として,1)については,① トヤマエビの行動特性の調査,②水槽実験によるかご漁具の網地の網目サイズと脱出効果の関係の解析,③水槽実験による脱出口の形状・サイズと脱出効果の関係の解析,2)については,④試験かごの試作および大型水槽における脱出効果の評価,④実操業における試験かごの試用,を実施項目としている。このうち,本年度は①,②を実施しており,全体計画に対する進捗状況は概ね当初の予定通りであり順調と判断される。ただし,②における網目サイズについては,今後サイズの種類を追加してさらに検討する余地があると考えられたため,今後,③の実験と合わせて追加実施の予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究では,1)トヤマエビの行動特性とかごからの脱出行動に関する水槽実験,2)試験かごを用いた効果の評価,を計画の骨子として,① トヤマエビの行動特性の調査,②水槽実験によるかご漁具の網地の網目サイズと脱出効果の関係の解析,③水槽実験による脱出口の形状・サイズと脱出効果の関係の解析,④試験かごの試作および大型水槽における脱出効果の評価,④実操業における試験かごの試用,を実施項目としており,すでに①,②を実施した。今後は,当初の予定通り北海道大学函館キャンパスの先端環境制御実験棟内に設置された海水循環式飼育水槽を使用して③を実施する。 具体的には,脱出口形状(円形,方形)とそれぞれ異なるサイズの数種類の脱出口の脱出率を求め,適切な形状・サイズを選定し,②による適切な網目サイズの結果と合わせて小型個体保護に適したかごの仕様を決定し,それをもとに試験かごを試作することを計画している。また,試験かごの脱出機能の評価のための大型水槽での実験の準備を進める予定である。
|