研究課題
近年、水産養殖業のグローバリゼーションに伴い、有用貝類の世界中への輸出入量はますます増加する傾向にある。目的とする有用貝類に伴って、非意図的移入生物である環形動物門多毛類が大量に、繰り返し、生きた状態で世界の海域を移動している。スピオ科多毛類に含まれるpolydoridsの仲間は、貝類の貝殻に自ら穴を掘って棲管をつくり、または貝殻の隙間に泥管をつくり生息することが広く知られ、それらの中には有用貝類の成長阻害や斃死を引き起こす種が報告されている。それら非意図的移入種の実態について、台湾の中・南部である台中、台南において現地の共同研究者と調査を行った。天然の貝類を中心に、貝殻に生息している Polydorids の種の同定を、形態学的および遺伝子解析より明らかにした。ホストである貝類の侵蝕状況や環境調査も合わせて行った。また、仙台市七北田川河口域のマガキに生息する1種と、石巻市スロープに付着するマガキに生息する2種について、侵蝕状況、個体群季節変化、生活史について追跡を試みた。以前行った台湾・台北や北フランス・ノルマンディーの養殖・天然貝類の侵蝕状況と貝殻に生息していた種の解析の結果について、国際多毛類学会、世界貝類会議をはじめ、国内の学会において発表を行った。
2: おおむね順調に進展している
海外の調査については協同研究のために計画通りには行かなかった部分もあったが、国内のサンプリング調査と解析については概ね順調に進んでいる。
海外の調査については、今後も共同研究者と打ち合わせをしながら進める予定である。国内の調査については、宮城県を中心に、他の海域でも広く行う予定である。遺伝子解析については、核DNAのみならず、本グループでは困難とされるミトコンドリアの複数の領域に挑戦するなど、より多くの領域の配列を読み、総合的に有効な種判別に耐え得るデータの取得と蓄積を計画している。
海外での調査の一部が共同研究者との研究の都合により計画通りに実行できなかったため、その分が次年度へと繰り越された。次年度には、計画通りに遂行する予定である。
すべて 2019 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 8件、 招待講演 2件) 図書 (4件)
Marine Biodiversity
巻: 49 ページ: 25-42
10.1007/s12526-017-0751-y
Marine Biodiversity Records
巻: 12 ページ: 1-12
10.1186/s41200-019-0167-4