研究課題
今年度は, 以下の成果を得た。① 集団遺伝学の中心パラメータの一つである固定指数(FST)の推定理論を整理し、シミュレーションおよびヒト、タラ、ポプラの実データ解析によりそれらの性能を評価した。集団固有FSTおよび集団対FSTは、遺伝子座の数が大きくなると不偏推定量となることを解析的に示すとともに、ヒトの事例データとRプログラムを公開した。② 北太平洋のサケの分布域を網羅するマイクロサテライト及び一塩基多型(SNP)の公開データを解析し、サケの集団構造と動態史を推測した。最尤法(TreeMix)は、日本の集団は進化的に最も新しいと推測した。また、中立集団構造から大きく乖離し日本の集団を特徴づけるSNPsが検出された。上位の外れ値 SNPsは、mtDNA3(運動能力、エネルギー代謝に関連)、GnRH373(卵巣成熟、回帰)、ras1362(細胞成長)、TCP178(精子受精能)であった。③ アユの分布域を網羅するマイクロサテライトの公開データを解析した。推測された集団構造と集団の動態史は、移殖された湖産アユが全国の河川集団で交雑していることを一致して説明した。全国の河川を平均した交雑率は24±8%と推定された。④ 1992年に発表した水揚げの2段サンプリングによる放流効果の不偏推定法(Kitada et al. 1992)の普及を図るため、推定量と最適調査日数の推定法を簡潔にまとめ、ヒラメの事例データとRプログラムを公開した。研究期間全体では、⑤世界及び⑥日本の種苗放流効果と野生集団への影響をメタ解析とシステマティックレビューによって評価するとともに、⑦鹿児島湾のマダイの種苗放流効果と野生集団への遺伝的を長年蓄積されたデータを解析して総括した。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件)
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