研究課題/領域番号 |
18K05786
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
佐藤 成祥 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 特任准教授 (40723854)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 精子貯蔵 / 父性解析 / 交尾後性淘汰 / 配偶者選択 |
研究実績の概要 |
近年、スルメイカの不漁が全国的なニュースとして報じられる等、イカ類の中でも水産資源として優良な種が数多く属するアカイカ科では、その漁獲量の動向は高く注目されており、資源の持続的利用を行うための再生産過程および生活史の解明は重要な課題である。沿岸性のイカでは口の周りに受精嚢と呼ばれる精子の貯蔵器官を一つ保有するが、アカイカ科だけは例外的に複数の受精嚢を持つことが知られている。一般的に資源変動が大きい生物において、遺伝的に多様な子を生むことは子供の全滅を避けるために有利になると考えられている。資源量の変動が激しいアカイカ科では、より多くの雄の精子を獲得し貯蔵するために、複数の受精嚢が進化したのかもしれない。この仮説を検証するため、スルメイカの精子貯蔵戦略と遺伝的多様性の影響について明らかにする。 本年度は、産卵回遊のために南下してきたスルメイカを捕獲し、受精嚢の数に雌の体サイズや雄から渡された精子塊の数が関係するのかを調べた。その結果、受精嚢の数と雌の体サイズ間、受精嚢の数と付着精子塊数の間には関係性が見られなかった。 また、7月に隠岐の島沿岸に回遊してきた雌の成熟スルメイカを捕獲し、付着精子塊のDNAを抽出すると共に、受精嚢内の精子を使って人工授精を行い、貯蔵精子の父性解析を行った結果、9個体もの雄の精子を貯蔵している事が分かった。このうち、付着精子塊の父性はたったの2個体だったことから、その多くは以前に交接した雄によるものであることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
人工授精による受精嚢内の貯蔵精子の父性解析に成功したものの、一個体のみでしか実験を行う事が出来なかった。本年度は残念ながら、スルメイカの資源量が想像よりも少なく、繁殖個体の回遊が予想よりも早く終わってしまった事。また、冬季の来遊群についても成熟個体が見られなかったことから、追加実験を行う事が出来なかった事が原因である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はサンプル数を稼ぐことは出来なかったが、実験自体は極めて上手くいき、手法については確立できた。また、今年度の採集結果から、来年度はスルメイカの来遊パターンについても把握することが出来た。この結果を参考に、次年度はスルメイカの採集を本年度よりも正確に予測することが期待出来るため、次年度も方針自体は変わらず、さらに実験例数を増やし、スルメイカの精子貯蔵パターンの理解を深くすることに尽力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
スルメイカの不漁に伴い、予定していたDNA実験を実施することが出来なかった。 本年度はその分の実験を行うため、昨年消化しきれなかった予算の分を本年度に使用する予定である。
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