最終年度である、本年度はコロナ禍による、移動制限の影響もあり、思うように調査を行う事が出来なかった。それでも、これまでの不漁によるサンプル採集の遅れを取り戻すべく、野外調査を実施したが、成熟雌を採集する事は出来なかった。形態測定については、なんとかデータが出そろい、スルメイカの精子貯蔵に関する実態を把握することができた。
一方、前年から行った、スペインの研究者との共同研究であるヨーロッパマツイカの繁殖生態の解明に関しては、貯蔵精子塊の父性解析を行うための、プライマーの設計に着手した。次世代シーケンサーで明らかとなった遺伝子配列を基に、マイクロサテライト領域の遺伝マーカー候補を選定し、PCR実験によって多型が多く、安定して読み込めるプライマーを5セット開発する事に成功した。今後はこれを使って、アカイカ科の中でもマツイカ属だけに見れる、外套膜の中の精子塊貯蔵について父性解析を行い明らかにする。
本研究では、サンプルの採集状況の悪化に加え、申請者の環境の変化や新型コロナウィルス感染等の影響により、期待通りの成果を得ることはできなかったが、ヨーロッパマツイカの研究を新たに加えることにより、研究内容の質を上げることには成功した。基礎固めが完了したこの研究について、今後は、マツイカの結果と、スルメイカの結果の残りを近々にまとめ、比較、検討する事によって、アカイカ科における複数の精子貯蔵様式の進化に迫っていく。
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