小規模漁業は、東南アジアをはじめとする熱帯・亜熱帯地域の漁村において、食料生産や直接・間接雇用を創出する重要な役割を担っている。一方で、使用される漁船のサイズおよびエンジン馬力が小さいため機動性が強く制約され、水産資源の利用は密集していて、沿岸に近い特定海域に過剰な漁獲圧がかかり、乱獲を助長しているという問題が挙げられる。 本研究では熱帯・亜熱帯地域において、海洋環境や水産資源に過度な負荷を与えない小規模漁業の各漁業種の操業実態に即した経済的に合理的で最適な操業モデルを提示することを目的として、日本国内およびタイ国の沿岸漁業を調査対象として、熱帯・亜熱帯域における小規模漁業の操業に関するモニタリング手法の確立、各漁業種による漁獲海域、漁獲物、燃油消費量の季節変動の解明、漁獲物の季節変動が水産物流通、漁業経営に与える影響のモニタリング評価について取り組んだ。 鹿児島県小型底曳網漁業およびタイ国ペッチャブリー沿岸カニ刺網、魚かご漁業の小規模漁業を対象として収集したデータから操業海域および漁獲量の季節変動を明らかにした。鹿児島県小型底曳網漁業では、漁獲種数および組成、操業時間帯(昼間・夜間)、操業海域(沿岸、湾中央部、湾口)が漁獲量に及ぼす影響を明らかにし、タイ国のカニ刺網・魚かご漁業では、モンスーン気候による風向風速の変化が漁船の出漁に及ぼす影響、月齢と漁獲量の関係を示すことができた。 新型コロナ感染症拡大で中止になっていた海外渡航が解禁されたことにより、2022年9月20日~24日にタイ国カセサート大学において、これまで共同で研究を進めてきた研究者と最終の取りまとめを行うことができた。
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