研究課題/領域番号 |
18K05789
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
勢戸 祥介 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (70270759)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ノロウイルス / 養殖カキ |
研究実績の概要 |
実験用小型水槽内で牡蠣にネコカリシウイルス(Feline calicivirus;FCV)を取り込ませる条件を検討した。WDB環境バイオ研究所(徳島県)より試験用マガキ(Crassostrea gigas)を購入し、小型水槽(人工海水、水温20℃)に投入し約6時間回復させた後、呼吸や排泄が確認できた個体を試験に供した。試験水槽(円柱型ポリカーボネート、人工海水25L、大気通気攪拌、水温20℃)に牡蠣6~8個ずつ分配した後、FCV 107TCDI50/mLウイルス液25mLを加え水槽全体が均一になるよう軽く混ぜたのち18時間蓄養してウイルスを取り込ませた後、新しい人工海水に全換水し、さらに22時間蓄養した後開殻し中腸腺を摘出した。摘出した中腸腺は、細胞破砕機(Micro Smash、トミー精工,MS- 100)で4,500 rpm、15秒間の破砕を2回実施した。中腸腺破砕液の遠心上清(10,000 x g, 10分)を0.45μmの滅菌フィルターでろ過後、ウイルス量を測定した。ウイルス量はCRFK細胞(ネコ腎細胞)を用いた50%培養細胞感染価(50% Tissue Infectious Dose;TCID50)およびTaqMan probeを用いたリアルタイムPCR法によるネコカリシウイルス遺伝子コピー数の測定を行なった。その結果、培養細胞感染価で102~103TCID50/中腸腺が検出され、リアルタイムPCR法では102~103コピーのウイルス遺伝子が検出された。この条件を牡蠣へFCV等を取り込ませる条件とした。 今後、22時間蓄養時に海水中に卵黄抗体(IgY)を添加し牡蠣中腸腺中のウイルスに結合できるか検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
FCVの取り込み条件と同様に、ノロウイルスVLPを牡蠣に取り込ませた。22時間蓄養し中腸腺を摘出し、中腸腺破砕液を作成しELISA法でノロウイルスVLPの定量を試みたが検出限界以下であったが、中腸腺破砕液を市販のノロウイルス迅速検出キット(クイックナビノロ2、デンカ生研)を用いたところノロウイルス抗原が検出できたことから、ノロウイルスVLPを取り込ませることができたと考えた。 ウイルス等添加せずに処理した後、22時間蓄養時に人工海水に正常産卵鶏由来卵黄抗体(control IgY)を添加し、同様に中腸腺破砕液を作製し、ELISA法でIgY量を測定したが、検出限界以下であったが、IgYは水溶性であるため牡蠣に取り込まれても中腸腺に蓄積しないと考えられた。 ホルマリン不活化FCVとオイルアジュバントを等量混和し免疫原として、産卵鶏を免疫し、集卵し卵黄より抗FCV IgYを粗精製し凍結乾燥した後、10mg/mL(総IgY)となるようPBSに溶解後、0.45μmのフィルターでろ過滅菌し、抗FCV IgY溶液として使用時まで-20℃で保管した(イーダブル・ニュートリション・ジャパン、岐阜県)。抗FCV IgY溶液のFCV(200 TCID50/0.1mL)の中和抗体価は640倍であった。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度に確立した牡蠣へウイルス等を取り込ませる条件で以下の実験を行い中腸腺内で抗原抗体反応が起こっていること確認する。FCVを取り込ませた後、抗FCV IgY添加人工海水中で蓄養し、FCVの不活化を検討するため、中腸腺破砕液中のFCVの培養細胞感染価およびウイルス遺伝子コピー数の測定を行う。ノロウイルスVLPを取り込ませた後、抗ノロウイルス IgY添加人工海水中で蓄養し、ノロウイルスVLP-抗ノロウイルス IgYの検出を行う。 また、次年度に向けて中腸腺内で抗原抗体反応を直接的に証明できる蛍光抗体法あるいは免疫沈降法等の方法を模索する。さらに、実際の牡蠣浄化水槽を用いた試験に協力していただける牡蠣養殖業者の策定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度に宿泊を伴う東京で開催される学会への参加を計画していたが、京都(宿泊無し)で開催された日本ウイルス学会総会に参加したため、旅費に余剰金が発生した。余剰金については2019年度に物品費として実験用プラスチック器具等消耗品購入に充てる予定である。
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