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2021 年度 実施状況報告書

養殖環境で生じる多剤耐性遺伝子の細菌プラスミドから染色体への乗り換え機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 18K05790
研究機関尚絅大学

研究代表者

野中 里佐  尚絅大学, 生活科学部, 准教授 (70363265)

研究分担者 矢野 大和  東北大学, 生命科学研究科, 講師 (20646773)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2023-03-31
キーワード遺伝子伝達 / 多剤耐性プラスミド / トランスポゾン / 薬剤耐性菌 / SE / ビブリオ属 / 養殖場 / チロシンリコンビナーゼ
研究実績の概要

薬剤耐性菌の出現は世界的な問題であり、近年では医療現場のみならず畜産水産など抗菌薬を使用する全ての場所でのワンヘルスアプローチが必要である。これまでの我々の研究により養殖場から分離された多剤耐性菌シンプルなプラスミドの伝達に加え、メカニズム不明なものも含む多様な遺伝子伝達機構を利用していることが明らかになった。本研究ではこの多剤耐性プラスミドがレシピエント染色体上に組み込まれるメカニズム不明の機構を分子レベルで明らかにすることを目的としており、これまでの研究により以下の結果を得た。
養殖場由来の多剤耐性ビブリオ属菌を用い、受容菌として用いた大腸菌の染色体へこれが組み込まれる現象には既知のトランスポゾングループには分類できない新規の可動性遺伝因子が関与していることを明らかにし、これをSEと命名した。
SEが伝達する際にはまずSE自身がもとのDNAから環状分子として切り出される。この切り出しの際、二本鎖DNAのtop strandのみの鎖交換が行われることおよびもとのDNA分子上にSEが切り出された痕跡となるフリーの切り口が検出されないことから、SEはcopy-out-paste型の可動性因子であることが示唆された。なお SEは4つの保存された遺伝子を保有し、うち2つはチロシンリコンビナーゼをコードしていた。
以上の結果から、多剤耐性プラスミド上にコードされているSEは受容菌に伝達された後に染色体へと飛び移り、さらにこの染色体に飛び移ったSEのコピーともとのプラスミド上のSEとの間での相同組換えが起こり、プラスミド全長が染色体へ取り込まれていることが強く示唆された。このようにSEをもつことにより、薬剤耐性プラスミドは自身の宿主範囲の外にある宿主の染色体へ移動が可能となることからSEによる遺伝子伝達は養殖環境中の細菌種間における薬剤耐性遺伝子の拡散に関与していることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究期間の延長を行ったがこれにより当初予定していなかったSEの細菌種における分布と多様性およびSEを構成する4つの遺伝子がその働きに必須であるか否かにについて検証することができ論文投稿することができたため。なお1回目の投稿はリジェクトとなったため現在再投稿準備中である。

今後の研究の推進方策

本研究結果の一報目は学術誌に投稿済みであり、現在二回目の審査中である。査読の結果要求される追加実験については速やかに実施し2022年度中の受理を目指す。なお、二報目に関しては再投稿の準備が整いつつあるが新規可動性因子SEの報告である一報目の受理が必須であるため、これが受理された後に再投稿予定である。

次年度使用額が生じた理由

研究代表者が所属機関を異動し二年目の年であったが、新しい所属機関での研究環境のたちあげおよび教育業務の増加およびオンライン授業への対応等により研究活動の時間が極端に減ったため、研究費の使用額が大幅に減った。大学の保有機器や他の教員が保有する実験設備について正確に把握したうえで優先的に購入するべき機器を選定し無駄なく研究費を利用するために研究期間をさらに一年間延長し、研究費の多くを次年度に配分した。
【今年度の使用計画について】ゲル撮影装置48万円、LED照射装置20万円、小型プリンター30万円、バイオ用冷凍冷蔵庫40万円、電子タブレット10万円を購入予定である。また現在査読中の論文投稿料金30万円を予定している。大学の前期の講義期間の終了後である8月に機器選定、見積もり依頼および業者選定を行い9月初めに大学へ申請および業者への発注を行い、1ヶ月の学内審査期間を経て、11月中に納品を完了させることを計画している。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Host range of strand-biased circularizing integrative elements: a new class of mobile DNA elements nesting in Gammaproteobacteria2022

    • 著者名/発表者名
      Desmila Idola, Hiroshi Mori, Yuji Nagata, Lisa Nonaka, Hirokazu Yano
    • 雑誌名

      Research Square

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.21203/rs.3.rs-1499202/v1

    • オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Atypical integrative element with strand-biased circularization activity assists interspecies antimicrobial resistance gene transfer from Vibrio alfacsensis2021

    • 著者名/発表者名
      Lisa Nonaka, Michiaki Masuda, Hirokazu Yano
    • 雑誌名

      bioRxiv

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1101/2021.06.22.449512

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 鎖バイアスのある環状化を行う新奇インテグレイティブ・エレメントの発見(Discovery of integrative elements with strand-biased circularization activity)2022

    • 著者名/発表者名
      矢野大和、増田道明、野中里佐
    • 学会等名
      第95回日本細菌学会大会

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公開日: 2022-12-28  

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