駿河湾の深海近底層で採集されるカジカ亜目クサウオ科魚類の多くは種同定が困難であったので,同湾深海近底層で採集されるクサウオ科魚類を用いて,分類を確立し,個体発育を明らかにした. 駿河湾からは4新種と2稀種を記載し,同湾産クサウオ科の分類学的問題を解決した(コンニャクウオ属1新種Careproctus surugaensis sp. nov. スルガビクニン;インキウオ属3新種Paraliparis ruficometes sp. nov. オナガインキウオ,Paraliparis variabilidens sp. nov.ミツバインキウオおよびParaliparis hokuto sp. nov. スルガノオニビ;コンニャクウオ属とインキウオ属の各1稀種 Paraliparis atramentatus インキウオおよびCareproctus rhodomelas バラビクニン).これらのうち,採集個体数が最も多かったParaliparis ruficometes sp. nov.は発育中に2か所の体部比と体色を除いて顕著な形態変化が認められず,直達的に発育した.卵巣卵の総数は146-338個,バッチ産卵数は3-8個,産卵期は周年で,雌は連続的に産卵することが示唆された.また,胃内容物は浮遊性の甲殻類が多く,埋在性のベントスは認められなかった. 比較標本から東北沖太平洋で採集されたParaliparis インキウオ属の1新種と北海道釧路沖で採集されたOsterodiscusハリバンクサウオ属の1新種を記載し,土佐湾で採集された稀種Paraliparis mandibularis アゴインキウオと岩手県沖で採集された日本初記録種のOsterodiscus andrasheviチョウジャハリバンクサウオを再記載し,日本産クサウオ科の分類にも貢献できた.
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