研究課題/領域番号 |
18K05795
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
小島 隆人 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (60205383)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 魚類心電図 / 生体電極 / インピーダンス |
研究実績の概要 |
魚にストレスを与える要因となる人間のハンドリングを経ることなく,心電図を導出する技法の開発を試みてきた。本研究では生体組織の交流インピーダンスが直流抵抗に比べ低いことから,魚が餌として捕食する生体を介した心電図導出を如何に精度よく行うかに主眼を置いてきた。特に,従来体内に挿入していた金属電極の代わりとなる,生体材料の餌の低インピーダンス化と,これを魚が如何に自発的に取り込むかは,本研究が目指している技術確立のためには,最も重要な要素となる。本研究では,硬骨魚類の筋肉組織よりもインピーダンスが低い軟体動物,ここではイカ類に着目し,筋肉をすり潰してすり身とすることで,インピーダンスをさらに低下させるとともに,電解質(塩)および,魚を誘引するためのアミノ酸をそれぞれ添加した餌(生体電極)の作成に成功した。これを用いることで,水槽内のアカハタおよび自然海域に生息するウツボからも心電図を導出することが可能となった。 なお導出された心電図は,アカハタでは約1分間,ウツボでは数10秒間の記録に止まっていた。この記録時間であっても心拍数の計測は可能であるが,自律神経系の緊張状態の推測に必要な周波数分析,特にFFTを利用した解析にはr-r間隔時系列のデータ数は不足であったが,記録された電位のデータを用い,これをケプストラム解析することにより,周波数成分の抽出も可能であることがわかり,従来の金属電極利用による心電図からは得られなかった,自然界における心拍数の少なさ,および自律神経系の緊張状態の推定にも利用可能であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画した実験のうち,自然海域で実施予定の測定については,コロナ禍の影響で出張が制限されたため,やや遅れている。現在のところ,コロナ禍の終息は見えず,再び拡大の様相を呈していることから,実験を室内での水槽に切り替えて実施することを計画している。
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今後の研究の推進方策 |
前述したように,自然海域に生息する魚類からの心電図記録が未だ十分に行なえていないが,本年度もコロナ禍の終息が期待できないので,実海域で実施予定であった実験を室内に切り替えて実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により,出張が規制されたため,自然海域での実験が行えていないため。 本年度は,自然海域で捕獲した天然魚を用いて,水槽下において水温,水中音などの環境条件を変化させて,生体材料である餌を介した心電図導出を行う予定である。
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