研究課題/領域番号 |
18K05796
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研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
山本 俊昭 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 准教授 (30409255)
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研究分担者 |
北西 滋 大分大学, 理工学部, 准教授 (90552456)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 次世代シーケンス / 生活史多型 / 代謝量 / サクラマス |
研究実績の概要 |
本研究の対象種であるサクラマスには大きく異なる二つの生活史が見られる。一つは河川で成長した後、海に降りて回遊し、再び母川に戻る降海型であり、もう一つは河川のみで性成熟に達する残留型である。本研究では生活史多型の分岐メカニズムを解明するため、代謝量に関連した遺伝子を生活史多型に関連した候補遺伝子として探索および解析すること、さらには代謝量に関連した遺伝子を基に交配実験を行い、生活史との関連性を示すことで、生活史多型の遺伝子基盤を解明することを目的としている。今年度は回遊期間および回遊時期など生活史の異なるサクラマス3亜種の16検体を用いて次世代シーケンスによる網羅的な遺伝子解析を行った。その結果、亜種特異的な領域が相当数明らかになり、ビワマスでは95遺伝子座、サクラマスでは343遺伝子座、ビワマスでは210遺伝子座が亜種特異的な遺伝子として候補となった。さらには、これら遺伝子から生活史分岐に大きくかかわるスモルトおよび成熟に関連する遺伝子として検討できるよう、多検体を用いて亜種特異性の検定を行った。また、代謝に関連した遺伝子を明らかにする作業も行っている。今年度は、RNA発現量解析を来年度に行うための準備として、サクラマスの生活史分岐のタイミングである成熟期(9‐10月)およびスモルト期(3月)においてスモルト10個体および非スモルト個体10個体の末端組織および臓器をサンプリングしてRNA抽出するところまでを行っており、今後網羅的に遺伝子発現量解析を行う予定としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
遺伝子発現量解析を今年度において行う予定であったため、多額の研究費申請を行っていたが、成熟期(10月)だけでなく、スモルト期(3月)においても比較することを検討したため、今年度の実施がやや遅れているところである。昨年度末にサンプリングが終わっているため、RNA抽出を行った後に早急に分析を行う予定である。 一方で、3亜種を使って遺伝子配列の比較を行ったところ、相当な候補遺伝子が現在挙がっているため、生活史多型に関連する遺伝子を探索することへの期待が高いと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
RNA発現量解析を来年度早々に行い、さらに候補遺伝子から生活史多型に関連する遺伝子を明らかにするため、リアルタイムPCRによってさらなる絞り込む作業を行いたいと考えている。また、繁殖時期においては、遡上してきた親を用いて交配実験を行い、生活史に対する候補遺伝子の影響を実験下で証明していきたいと考えている。そのための準備を繁殖期までには行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度においてRNA発現解析を外部に委託する予定としていたが、生活史多型の候補遺伝子を検討するうえで重要なスモルト期が3月であったため、次年度に委託費として110万ほどを保留した。平成31年度の4月にはこれらサンプルが既に揃っているため外注する予定であり、計画を進めている。
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