本研究は自然生態系の淡水域のシアノバクテリアの時計遺伝子に注目した点,および一次生産者の概日時計の役割を明らかにすることを試みる点が,先行研究と比較して,独自性・創造性が高い.これまで水域生態系の基盤をなす植物プランクトンの動態,例えば植物プランクトン種組成の季節変化といった現象を考える際,食物網におけるトップダウン効果とボトムアップ効果のバランスで考えられてきたが,さらに内生リズムが重要な役割を果たす可能性がある.本研究の成果は「時計遺伝子はプランクトン態のシアノバクテリアでは維持されているが,付着態などのシアノバクテリアでは適応的意義が少なく失われている」といった検証可能な予測を与える.
|